2002.11.04

久しぶりに夜の 関空 → 松山 を飛んだ。
上空に寒気が入っており、揺れる雲が 20,000feet ほどまであった。
幸い私達の巡航高度 22,000feet は雲の上で気流は良好だった。

16,000feet では50kt程度の風が 20,000feet では100ktも吹いており、22,000feet では120ktだった。
普通ならこれほどの風速の変化があると、この近辺の高度は上昇、巡航、降下、ともに揺れるのだが、
何故か今日は風による揺れはなかったようだった。

瀬戸内海の上を東から西へ向けて飛行し、広島空港が真北に見えるあたりから、
左(南)に旋回して松山へと向かう。
ILS14 の電波に乗るために、さらに左旋回して東南に機首を向けていた、まさにそのとき、
右席に座る私の視野の右の隅の方に何かが写った。
ハッ、とそちらの方角を見ると、明るい光りの筋が北から南に向かって、ものすごいスピードで流れた!
え゛っ?!
ミサイル??!!

かなり低い高度を、真横に飛んで行ったその大きな物体を見たとき、私は心臓が止まるかと思った。
ミサイルのような物体が飛んだ後には、黄色い光りの筋がかなり長いこと空中に残ったのだ。
一瞬、私は何が起こったのか理解できなかった。
しかし、光りの筋の先端を走るその物体は炎を出しているようで、まさに流れ星(隕石?)だったのだ。

とんでもなく大きな流れ星が通った後に、光りの筋を数秒間残すような光景を、
私は今だかつて見たことがなかった。
願い事なら3回どころか10回は言えたろうに、
私は口をあんぐり開けたまま言葉を失い、呆然としてしまった。



2002.11.05

昨晩、ホテルのエレベーターに乗ったとき、床に赤いバラの花が落ちていた。
つぼみの状態で、これから開くところだった。
拾い上げると、花の部分のみで、茎は2cmほどしかなかった。

誰が、何の目的でこういうバラの花を使うのだろう?
花束みたいなものの1部に使われたのだろうけど、きっと1個、落ちてしまったんだろうなぁ。

そのとき思い出した。

たまには花とか、買ってきてくれてもいいのよ。」(妻)

私は花にはあまり興味がないが、赤いバラだけはとても好きだ。

よしっ! 持って帰ろう!

バラを拾い上げ、部屋へ急いだ。
茎の切断面は完全に乾いていた。
カバンからアーミーナイフを取り出し、茎の先端を斜めに切った。
底の浅いグラスに水を入れ、そこにつけたまま保管した。

朝、ホテルを出る直前にティッシュを濡らしてバラの茎の部分に巻きつけ、
さらに新聞にくるみ、買い物でもらうプラスティック・バッグに入れてからカバンに入れた。

帰宅後、妻に 「プレゼントあるんだぁ〜♪」 と言って、
客室乗務員(CA)にもらった小さなチョコレート1個と、水に濡れた新聞を手渡した。
なに、これぇ?」(妻)
眉間に思いっきりしわを寄せながら、親指と人差し指で摘んだ新聞をキッチン・カウンターに置いた。
なによ、これぇ?」(妻)
もう一度イヤそうな顔をしてニヤニヤ笑っている私を妻は見た。

親指と人差し指で新聞の端をつまみ、ゆっくりと転がしながら開けていった。
中から彼女の大嫌いなゴキブリでも出てくるんじゃないか?とビクついているようにも見えた。
そして・・・・・・、やっとバラが出てきた♪

なによ、これぇ?」(妻)
「イヤさぁ、松山のホテルのエレベーターで拾ったんだけど、キレイだし、
 前から花を買ってきて欲しいようなこと言ってたし、それで持って帰ってきたんだよ♪」
あ、ありがとう・・・・・・・・・・・・・。」(妻)
アリャリャ、全然嬉しそうじゃないぞ??!!
「こうやって、小さいグラスに水をはってさしておくと、、、ホラっ、かわいいだろ?」

妻は笑いながら、私がやったようにバラの茎の先端をハサミで切って、再びグラスに戻した。

私以外の人がバラの花(だけ)を拾っても、きっと普通の人なら捨てると思う。
それをたまたま私が拾ったから、生きながらえて私の目を楽しませてくれている。
妻は喜んでくれなかったが(当たり前か?)、やぱり拾って帰って良かったぁ〜♪

CA にもらったチョコレートは、食べてみてかなりおいしかったようで、ご満悦の妻だった。



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ボクシング、元WBA世界ミドル級チャンピオンの竹原慎二さんの記事が日経新聞(四国版)に載っていた。
その中で、彼の言葉が印象に残った。

「人間の一生は楽して過ごすことはできない。
 だが真剣にやれば何かきわめられる。
 そうボクシングから学んだ。
 だから、子供たちには、例え学校の成績が悪くても、
 一生懸命がんばれば必ず何かチャンスは生まれると教えたい。
 人間は皆平等にチャンスがある。
 努力がそのチャンスを作る。
 チャンスを作ることができれば運も回ってくる。
 失敗しても恐れずに努力を重ね、自らチャンスを切り開く人間になってほしい。」

人間って、どうして平等ではないんだろう?
だいぶ昔のことだが、いつもそう思っていた私に、ある友人の父が言った。

人間ってさぁ、みんな平等に24時間を与えられてるんだよなぁ。
 その24時間をどう使うかが問題さ。
 寝てもいい、働いてもいい、遊んでもいい。
 でも、その時間の使い方の積み重ねが人の人生を決めるんだな。
 そういう意味で、人間って、みんな平等なんだ。


人間の平等とか、そういった話題だったわけではないのに、その人は突然こんな話しをしてくれた。

努力、才能、運

この3つが人の人生を左右すると私は思う。

「才能」 は、人が持って生まれるもので、自分の力ではどうにもならない。
例えば私は完璧な理系の脳を持っており、昔から文章を書くことが大の苦手だったし、
書物を読むことは大嫌いだった。

「運」。 これもまたどうにもならないことだ。
私は昔からジャンケンに弱く、遊んでいていつも鬼ばかりしていたような記憶がある。
クジ運も悪くい。 あみだもそうだし、おみくじ系もダメ。
ビンの中に入った棒や玉を取るタイプのクジも大嫌いだ。
自分は運がいいなぁ、と思うことはほとんどない。

そんな中で、唯一自分のコントロールできることは 「努力」 である。
努力だけは、自分の意思でなんとでもなると思う。
だから、私は努力だけは惜しまないようにしている。
時間がない、忙しい、疲れた、という言い訳はしないようにしている。

そう考えるようになってもう十数年になるが、
不思議なもので、「努力」 をしていると 「運」 が向こうからやってきたり、
なかったはずの 「才能」 が芽生えたりするのかなぁ?と感じるようになった。

文才のなかったはずの私だが、日記を書くようになり、しかも沢山の方に喜んでもらっているようだし、
あれほど大嫌いだった新聞を、今では隅々まで読むのが楽しくなった。
「運」 については、こういった経験がある、という事実なないのだが、
なんとなく色々な面でチャンスができてきたように感じる。
自分が前向きになった分、何かと良いことがあると、
今までなら見過ごしていたような些細な出来事も、
ラッキィ〜♪、と感じられるようになったせいかもしれない。
一見、逆境に感じられることも、ポジティブ思考でチャンスに変えてしまっているのかもしれない。

「努力」 さえしていれば、「才能」 は開花することもあるし、「運」 も訪れる可能性が増える。
そう信じて、どんなときにも自分に厳しく、ずっと努力し続けて生きていきたいと思う。



2002.11.08

南風が吹いていた千歳空港へのアプローチは、VOR No.2 19L だったが、
高度、3,000feet まで下げた辺りで地上の風は変わり、北風になった。
340度から13kt。(北風)
管制官は私達に 19L へ着陸するか、01R に着陸するか聞いてきた。
とりあえず、千歳空港は滑走路は長いし、規定上は追い風15ktまでの着陸は認められている。
キャプテンも同じことを考えていたようで、19L にそのまま着陸する旨、管制官に伝えるよう指示された。

さらに 2,000feet まで降りると、再び管制官が風の状況を伝えてきた。
010度から17kt。(北風)
これでは追い風は15ktを超えており、19L に着陸することはできない。
01R へ回りこんで降りることにした。

高度を下げていったが、ずっと南風のままだった。
う〜ん、おかしいなぁ。 南風は、いつ、北風に変わるんだろう?
あまり低い高度で急激に変化して欲しくないなぁ・・・・・。

もう間もなく着陸、という 400feet でいきなり北風に変わった!
追い風から向かい風に変化すると、空気の中を移動している飛行機の速度は増加する。
このとき20〜30kt近く速度が一気に増えてしまった。
速度が増えると揚力が増えるので、飛行機は持ち上げられてしまう。
着陸しようとする滑走路に対して高めになってしまったが、キャプテンはうまいことパワーを絞り、
飛行機をコントロールして着陸した。

私達の次に着陸する飛行機に教えようと、私は管制官に無線で知らせることにした。
「400feet で20ktのゲイン(Gain)がありました。
 ヘッドウィンドシヤー(Head Windshear)でアップウォッシュ(Upwash)がありました。」
 Gain = 風の増速
 Head Windshear = 向かい風が強くなる、または、追い風から向かい風に変化する
 Upwash = 飛行機が持ち上げられる

私が管制官に通報した内容をディスパッチャーは聞いていてくれたようで、
すかさずカンパニー無線で他の到着機、全機に対して放送してくれた。
ディスパッチャーもさすがはプロ。 こういう大事なことを聞き逃さないところが嬉しい。

今、降りました飛行機によりますと、400feet で20ktゲン(減)。
 ヘッドウィンドシヤーでアップウォッシュがあったようです。
」(カンパニー無線)

????????

20ktゲン(減)だったら、ヘッドウィンドシヤーじゃなくて、テイルウィンドシヤーになっちゃうじゃん。
 Tail Windshear = 追い風が強くなる、または向かい風から追い風に変化する
そこで、私はカンパニー無線で訂正の一報を入れた。

「えぇ〜っと、400feet で20ktのゲイン(Gain)です。 ヘッドウィンドシヤーでした。」
400feet で20ktゲン(減)。ヘッドウィンドシヤー。了解しました。」(ディスパッチャー)
????????
どうして伝わらないんだろう??と、キャプテンの方を振り向くと、キャプテンが無線を代わってくれた。

400feet で20ktの増速。 減速ではありません。」(キャプテン)
了解、20ktの増速。ヘッドウィンドシヤー。」(ディスパッチャー)

あぁ、なぁ〜んだ、そういうことか! ゲインがゲンと聞こえてしまったのかぁ〜。

誤解を招かない言いまわしについて考えさせられてしまった。



2002.11.11

関空で長〜い中空きのパターン。
しかも3時間もある。
仕事終了時間は23:40だ。
通常ならもう寝ている時間・・・・・。

中空きの時間に妻に電話をしようと、公衆電話へ向かった。
そこは関空のゲートタワーホテル、ワシントンホテルへのシャトルバスが出発する場所だ。

中年の女性が電話をかけようとする私に話し掛けてきた。
ワシントンホテル行きのバスが、すぐそこのバス停から出発するのかどうか?
何分に出発するのか私に聞いてきた。
シャトルバスを使うことのない私には分からない。
彼女のために時刻表を見に行ってあげた。

??なんで自分で見ないんだろう??
あぁ、そういえば、こちらから質問したとき、無言だったなぁ。
流暢な日本語で 「ワシントンホテル行きのバスはそこから出るのですか?」
と聞いてきたけれど、ひょっとして外国人かなぁ?

時刻表をチェックしてから電話をかけていた彼女のもとに戻った。
受話器を置き、私に近づいてきた彼女に恐る恐る聞いてみた。
「失礼ですが、日本人のかたですか?」
いいえ・・・・。
「Do you speak English?」
Yes, I do.

どうやらほとんど日本語が分からないようすの彼女。
私も暇だったし、彼女のバスが来るまで世間話でもしておくか。

出身を聞くとマレーシア人だと言う。
1年ほど前に行ったランカウイの悪夢が蘇った。
(かなり面白くない旅だった。)
言わなきゃいいのに、思わず言ってしまった。
「私、ランカウイへ行ったことがあるんですよ♪」
どうでしたか?
最悪でした、なんてマレーシア人に言えるわけがない。
なんでこんな話を私から切り出してしまったんだ?
「・・・・いいところでしたよ♪」
すると、眉間に皺を寄せて彼女は言った。
Really?」(本当ですか?)

しもうたっ!
そっかぁ、彼女もあまりいい印象じゃないんかぁ?
こういうとき、なんて言ってごまかせばいいかな?
マズイぞ、マズイぞ、マズイぞぉ〜。

「えぇーっと、ほら、いいホテルに泊まれば、場所はどうあれ楽しいじゃぁないですか?
 海はいまいちでしたけど。」
それもそうですね。
「ところで、ランカウイへ行ったこと、あります?」
私はマレーシア人ですよ♪
それって、どういう意味ぃ〜?
多分、行ってはいないっていう意味だよなぁ?
現地の人も行くリゾートだって聞いたんだけど、あれって、がせネタかぁ〜?

半袖のYシャツ姿の私だったので、屋外のバス停はちょっと寒
かったが、
かなりヒヤヒヤものの会話を数分して、身体は熱〜くなり、
額に冷や汗をにじませながら、笑顔で彼女と別れたのだった。



2002.11.12

私の妻はゴキブリが大嫌いだ。
以前、殺したゴキブリのヒゲを持って妻に見せようと近づいたところ、
かなきり声を上げてビンビン泣き出してしまった。
未だかつてそんなに大きな声で泣かれたことがなかったので、悪意のなかった私は本当にビックリした。

ゴキブリを見つけると私は嬉しくなる。
殺虫剤を手に追い掛け回すのが好きだ。
でも、殺したあとの後始末に悩むことが多い。

妻がゴキブリを死ぬほど嫌いなのは分かっているのだが、
私としてはゴキブリを妻に見せて、その反応を見てみたいのだ。
でも、泣かれるのはイヤだし、どの程度までが許容範囲なのか見極めるのが難すぃ。

この間は妻がお風呂に入っているときにゴキブリを発見。
殺してから、妻が風呂上りに通る通路に死骸を放置して観察しようとした。
しか〜し、たまたま沸かしていた麦茶が沸騰してこぼれそうになり、
キッチンへ行ってコンロの火を消している間に妻がそこを通ってしまい、
目撃したときの反応を見逃してしまった・・・・・。

私の実家では、ゴキブリに対する恐怖心を誰も持っていないので、
見つけたときに殺虫剤で殺すぐらいで、未然に発生を防ぐ対策のたぐいは全くしていなかった。
結婚したばかりのとき、妻がありとあらゆる場所にゴキブリホイホイを設置しているのを見たとき、
私は驚いたものだった。
ゴキブリホイホイの中に生まれて初めてゴキブリが張り付いて死んでいるのを見たとき、とっても嬉しかった。
もちろん古いホイホイを回収し、新しいホイホイを設置するのは私の仕事だった。
その後、どこから情報をゲットしたのか、ゴキブリホイホイよりもコンバットの方が効く、というので、
以来、我が家にはいたるところにコンバットが置いてある。

ところで、ゴキブリというのは食料が多いキッチンに出るもの、と思っていたが、
我が家では階段のそばの壁に出ることが多い。
階段下の収納には、床下収納があり、もちろん外につながっている。
もしかすると、家の外から室内に床下収納経由で入ってくるのかもしれない。

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ここのところゴキブリを見ることが少なくなったような気がしていただけに、
コンバットはやっぱり効くのかなぁ、と妻と話していた。

そんな矢先の出来事。

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なんとっ!キッチンで黒光りするゴキちゃんを発見〜♪
嬉しさのあまり目を輝かせ、殺虫剤を手にとり、ソーッとゴミ箱をどけると・・・・、
なんとぉーっ! さらにもう1匹、ゴキちゃん発見〜♪

キッチンにゴキブリが出たら、妻はそうとうショックを受けるだろうし、
ひょっとすると精神的ダメージまで受けるかもしれない〜♪
と、かな〜り意地悪な微笑みを浮かべながら、
私はすかさず 「ゴキジェット・プロ」 をゴキちゃん2匹にめがけて噴射〜!!

んっ? なんか景色が急に変わったぞ?
なんで暗いんだ?
カーテン??
ここはどこ?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・????
目をこすって辺りを見渡すと、そこは私の実家の私の部屋だった。


超リアルなゴキブリの夢。
どんな意味(私の精神状態?)があったのだろうか?

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学生時代、変わり者の英語の先生がいた。
何故、人間はゴキブリを毛嫌いするのか?
ある日、彼は私達にそう質問した。

恐竜が絶滅した氷河期も生き延びた。
マンモスが絶滅したときも生き延びた。
2億年も前から今まで生き続け、しかも姿を変えていないゴキブリ。
そんな生きざまが、がめつく、醜い人間の生き方と
私達の脳裏でオーバラップするのかもしれない。
あらゆる環境への適応能力と生命力を持ったゴキブリは、
環境破壊で人間が絶滅した地球上でも、きっと彼らは今のままの姿で生き延びるのだろう。
だから人間はゴキブリが大嫌いなのかもしれない、と彼は語った。


そういえば、彼は稼いだお金は全てキャッシュで持っていると言っていた。

欲しいものがあれば、私達はお店へ出向いて買い物をする。
お店が私達の家までわざわざ来てくれて、欲しいものを置いて行ってはくれない。
銀行はお金が欲しいわけで(預けて欲しい)、私達の家までお金を取りに来なければおかしい。
私達は誰かにお金を借りたとき、返すときは相手の所へ出向いて行って、お礼を言って返すはず。
私達は銀行にお金を貸してあげているので(預けて)、
私達がお金を返してもらうとき、銀行が私達の家まで届けなくてはおかしい。
それなのに、何故、私達がわざわざ銀行まで出向いていってお金を下ろすのか?
先生は不思議で仕方がない、と言うのだ。

ATMへ行ってお金を下ろすたびに、私は彼の言葉を思い出す。


さらに、この先生、自宅に電話がない、とも言っていた。
月曜から金曜までは自宅から出勤し、週末はもちろん電話を引いていない別荘で過ごすのだ。
仕事の時間に勤務の場所へ必ず出頭すれば、会社(大学)から私に連絡を取る必要はない。
仕事以外の時間はプライベートの時間であり、私は誰にも邪魔されることなく時間を過ごしたい。
だから電話は必要ない。
そう彼は言った。

あれから13年ほどになるが、この情報化社会をあの先生は
今も携帯電話も普通の電話もなく生活しているのだろうか?
超低金利時代、しかもデフレで銀行貯金に何の意味もない今の世の中、
ある意味、彼の当時の異常行為は時代を先取りしていたのかもしれない。



2002.11.22

関空に朝早く到着。
トイレにたてこもって新聞を読んでいた。

関空で働く人達が勤務するビルの男性用トイレには、大きい方は和式と洋式が1つずつある。
私は小さい頃に捻挫したとき、いい加減な治し方をして以来、足首の間接が大きく曲がらない。
このため和式のトイレにしゃがむことが不可能だ。
トイレは洋式にしか入らない。

また、最近の人達の傾向として、和式と洋式があったら、ほとんどの人は洋式を使うように思う。
伊丹空港内の古いターミナルでは、全部が和式で、1ヶ所だけ洋式、というトイレもあるが、
最近の公衆便所はほとんどが洋式で、和式は1ヶ所ある程度のことが多い。
そんなトイレでは、洋式が全て使用されているとき、仕方なく和式を使うケースがほとんどではないだろうか?

関空はターミナルは全て新しい。
にもかかわらず、和式1つ、洋式1つ、でとても困っているのは私だけだろうか?
洋式を私が使っていて和式が空いているとき、誰かが入ってきて洋式のドアをノックする。
私が内側からノックをすると、半分以上の人は和式を使わず、トイレから出て行く。
そのたびに、申し訳ないなぁ、早く出ないといけないなぁ、と思ってしまうのだ。
一つのフロアに、2ヶ所しかトイレがない、ということは、1つのフロアに2ヶ所しか洋式の便器がないことになる。
早朝のラッシュ時、これで足りるわけがない、と、私は思う。

さて、今朝もいつものように洋式を占領していると、誰かが入ってきてドアをノックした。
いつものように、内側からノックし返すと、その人物は言った。
大変失礼しました。
若い声の持ち主は、隣の空いている和式に入ることなく、トイレから出て行った。

34年間生きていて、公衆便所を何度となく利用してきたが、
内側からノックし返したとき、「大変失礼しました。」等、お侘びの挨拶をされたのはこれが初めてだった。
私も何か言わなくては、と思ったが、初めての出来事で驚きすぎたのと、
こういう場合何て言えば最も適切なのか分からず、私は何の声をかけることもできなかった。
もし、次にこういうことがあったとき、一体、何て言えばいいのか?
こんな礼儀正しい紳士がいるんだなぁ、と、朝から感心しまくってしまったのだった。

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松山 → 千歳 は 37,000feet で飛行した。
東北の上空まで来ると、通常なら西日本から飛んできた私達と同じ経路で飛ぶ飛行機や、
東京から千歳へ向かう飛行機、韓国の方向から入ってくる国際線、何かしらがいるはずだが、
何故か今日は誰もいない♪
しかも、170ktの追い風を受け、私達はかな〜り速い速度で飛んでいる。
もちろん早着は間違いなしだ。
千歳アプローチに入れば、きっと自衛隊機は多数飛んでいるだろうと思ったが、アプローチしている飛行機はいないようだった。
こんなこと、本当にめずらしい。 あめぃずぃんぐダ!

誰にも邪魔されず、一番最短経路でアプローチすることが出来たし、雪も降っておらず天気が良く、
メチャクチャ気持ちが良かった♪


 読者の方(女性)から、
 洋式より和式を使う人の方が多いような気がする、
 との投稿がありました。
 日記を読んだ妻も、実は同じことを言ってました。

 で、考えてみるに、
 男性の場合、個室を使うのは 「大」 のときだけ。
 女性の場合は 「小」 でも個室に入ります。
 頻度としては、「大」 より 「小」 の方が多いはず。
 「小」 は短時間で済みますが、「大」 は長時間かかります。
 (スッ、と出てくれる人も中にはいるでしょうが。)

 「個室」 に長い時間こもるとすれば、
 しゃがむより、座る方が楽なのかなぁ〜、と。
 「小」 のように短時間で済むなら、便器に直接座るより、
 便器にふれずにすむ和式の方が良いのかもしれません。

 洋式の便座に座ることに対する衛生面から考えると、
 恐らく男性より女性の方がキレイ好きな人が多いはずで(ホント?)、
 女性の方が男性より和式を好む傾向が強いのでは?と考えられます。

 また、体(膝、足首の関節)の柔軟性も、
 一般的に男性より女性の方があり(ホント?)、
 長時間、しゃがむことを苦痛に感じる人が少ないのかもしれません。

 まっ、どうでも、いっか?





2002.11.24

関空のリムジンバス・ターミナルで尼崎行きを待っていた。
日曜日の夕方だったためか、いつもより多くのお客さんが待っていた。
その中に、見た感じなかなかいい感じの女性がいた。
黒いコートを着た彼女、おもむろに透明のプラスチック製の細長いバンドを取り出した。
あれって、むちうち症のときとかに使うバンドじゃないの?
彼女は髪をかき分け、きわめて自然に、首にベルトを巻いたのだった。
それって、ずっと巻いてなきゃいけないものじゃないんですか?
はずしていてOKなら、邪魔だし、ずっとはずしておけばいいのに・・・・。
何か不思議な光景だった。

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千歳 → 松山 を飛行中、2時間以上もあると上空でキャプテンと色々な話しをする。

「『過去と他人は変わらない。』 って言うでしょ。」(キャプテン)

私は初めて聞いた言葉で、すぐには意味が分からなかった。

相手を変えようと思って色々言っても、
 例え自分が正しくても相手は決して自分の思うようには変わってはくれないよね。
 まず自分が変わらなきゃ。
 そうすれば、もしかすると変わった自分を見て相手も変わってくれるかもしれない。
 そんなことは分かってるんだけど、なかなかそのようには出来ないよね。
 相手の行動に腹が立って、カツンときて、何か言ってやりたく思ってしまうことって、あるよね。
」(キャプテン)

どんなに相手が理不尽でも、腹を立てずに相手を認めてあげる。
そのとき、イヤだなぁ、ムカつくなぁ、何言ってるんだ?、と、ほんの少しも感じることがなければ、どんなに楽だろう。
許してあげよう、という感情を持つのでは、相手に対してわずかにでも不快感を持っていることになってしまう。
そういう意味で、寛大、寛容、のレベルではダメなのだ。
明らかに間違っていると思われる相手の言葉、行為に対して、何も感じないでいられるような、
そんな神様みたいな人間になることって、きっと不可能なのだろう。

中には他人に何をされても腹を立てない人がいる。
でも、そういう人に限って、他人の無神経さに気が付かない代わりに、
自分自身が無神経な人だったりする場合が多いような気がする。
もちろん本当に心が美しい人もいるのだろうが。

寛容、寛大、という、「許す」 という気持ちが全くない状態、
それよりさらに高位な次元の 「心」 を持ってみたいものである。



2002.11.30

珍しくご機嫌ななめの私。

昨日のお昼過ぎから、左足の小指の付け根、外側がメチャクチャ痛い。

切り傷、擦り傷等のケガをして、面倒で消毒せずに土まみれにして放置しておいたとき、
数日後、傷口とその周辺が真っ赤に腫れ上がり、中が化膿していることがある。
ちょっと触っただけでも激痛が走る、そんなケガをすることがよくあるが、
今回は傷口がないところなのに皮膚の内側が化膿しているようだ。
珍しい現象だが、ある意味とても不気味で恐ろしい。

ひょっとして、とんでもない病気をどこかでもらってきたのかなぁ〜?
このまま足全体が化膿して、しばらくして体全体に広がって死ぬのかなぁ〜?
いつになく弱気な私。
足にぴったりの厚手の革靴を履いていると、傷口が当たり、痛いのなんのって、
もうピカイチだ。

痛いのは我慢できるが、足を引きずって空港ターミナル内を歩くのにはかなり抵抗がある。

羽田 → 伊丹 を移動するため、羽田空港へ行った。
袖のところに金色の線が入っている制服のジャケットと、フライトバッグを持って歩いていれば、
どこから見てもパイロットだ。
その人が足を引きずって、痛みに顔をゆがめながら歩いている姿を、あまり人に見られたくない。
しかも、何故か今日はターミナル内のお客さんの多いこと!
イヤだなぁ〜・・・・。
そんなわけで私はご機嫌ななめだった。

早めに羽田に到着。
トイレへ立てこもって、いつものように新聞を熟読。
その後とくにすることはなかったが、事務所へ行った。
出発時間の30分前にX線へ行くと、長い列が出来ていた。
こんなに混んでるの珍しい。
列はなかなか前に進まないので、フライトバッグを床に置き、新聞を読んでいた。

隣の列に並んでいた若い女性と目が合った。
きっと彼女も長蛇の列に退屈しているのだろう・・・・。
あれっ? 後ろの女性を肘で突っついた?
彼女はまだ私を見ている?ような気がする。
突っつかれた女性は私を一瞬見て、すぐに目をそらした。

私を見ていたのかなぁ?
きっと気のせいだろう。
イヤ、もしかすると私のHPを見ていてくれてる人かもしれない。
まぁ、いっか・・・・。

X線を通過し、搭乗ゲートのそばで立ったまま新聞を読んでいた。
新聞を読み終わり、そろそろ搭乗開始かなぁ、という頃、
念のため、もう一度トイレへ行った。

便器の前に立ち、ジッパーへ手を持っていくと・・・・、
?????
ジッパーがない??
け゛ぇ゛ぇ゛え゛え゛ぇ゛え゛ぇ゛ぇ゛え゛え゛〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!??
社会も窓は全開だっトゥァア〜♪

トイレを出て周りを見渡すと、何故かあたりいったいの人達、みんなが
私の社会の窓が全開だったことを知っていたような錯覚に落ち、かなり恥ずかしかった。
ヤッベェ〜、制服姿でチャック全開でターミナル内を歩き回っていたのかぁ〜。
メチャクチャ恥ずかしいなぁ〜。

今までの私なら、その恥ずかしさを引きずったに違いない。
見た目と違って、私は案外、小心者で小さなことを気にしてオロオロする。
赤面したまま長時間、それこそ羽田を離陸し、伊丹に到着し、勤務を終えて夜寝るまで、
さらには次の日の朝目覚めても、引きずっていたかもしれない。

ところが今日の私は違った。

待てよ。
直接、目が合ったのはX線に並んでた女性2名だけだろ?
普通、道を歩いていて、向こうから歩いてくる人の股間を、ジーッと見つめることってないよな?
よっぽど暇で、ベンチに座ったままボーッとしていても、よっぽど目立つ人でなければ、
沢山の人達の中でその人だけに注目することってないはずだ。
しかも、今日は幸い黒のブリーフだったから、遠くから見ても目立たなかったはずだ。
きっと、私の社会の窓が全開だったことに気付いた人は少ないに違いない。
それに、万が一何百という人達に目撃されたからと言って、
所詮、「恥はかき捨て」 だ。
どうせ、誰も気にしてないだろうし、一瞬笑われて、数日、笑いのネタにされて、そのうち忘れられる。
彼らに私が会うことは、もう一生ないだろうから、気にすることはないか。

かなり理論的に、冷静に考えることができ、
チャックの件をすぐに忘れてしまった恥じらいの微塵もない自分に、
年(オヤジ)を感じずにはいられなかった。


あれは今から8年前、オーストラリアでの訓練が終わったとき、
日本に持ち帰るのが面倒で、同僚が革靴を捨てた。
私の靴のサイズは25.5〜26.0cm。
彼のサイズは27.0cmだった。
私にはブカブカだったが、かかとが減っただけで見た目はまだ新しいその靴を、
もったいない、と、私はもらって日本に持ち帰った。

大雨のときや、バイクで会社へ行くとき(ギヤ・チェンジで靴の表面に傷がつく)以外、
滅多に使うこともなく私の部屋に放置してあったが、明日は仕事にあの靴を履いていこう。
ブカブカなので小指は当たらず、きっと靴を履いて歩いても痛くないだろう。

粗大ゴミやら、色々なものを拾って帰っては、いらないものを増やすなと妻にしかられるが、
明日はそれらのいらないモノが、か・く・じ・つ、に威力を発揮してくれる。
きっと妻への無言の抗議になるに違いない〜♪
ホ〜ッホッホッホッホ!! まいったか、ピョ〜ン!?