2003.04.01

4月から乗務パターンが大幅に変わる、という内容のメールを課長からもらったのは数日前。
そっかぁ〜、沖縄に行くのか。 久しぶりだなぁ。
そういえば出発経路が一部変わってたっけ。
広島に行くのは初めてだし。
勉強しとかないと。

ということで、休日を使って早めに終わらせておけば良いのに、昨日の晩にする羽目になってしまった。

伊丹空港でディスパッチに出頭したとき、キャプテンが行った。
今回のパターンって宮崎に行くんだったよね。 明日だっけ、明後日だっけ?」(キャプテン)
「へっ? 宮崎に行きましたっけ?」
おっかしいなぁ?
「沖縄に行くんですよね?」
えっ? 行かないよ。」(キャプテン)

ポケットから今月のスケジュール表を取り出して、今回のパターンを確認。
えーっと・・・・、KCZ(高知)、KIJ(新潟)、KMI(宮崎)、NGO(名古屋)・・・・・・。
あれ? 沖縄も広島もないじゃん・・・・・・。
ん? おかしいなぁ・・・・・・。
そうだ! 課長から来たメールを読んで勝手に沖縄と広島に行くって勘違いしたんだ。
そういえばスケジュール、全然、見てなかった!
いつ、沖縄と広島へ行くパターンが入ってるんだろう?
1日から30日まで上から下に向かって見ていくと・・・・、
ゲェェエエ〜〜〜ッ!!?? 27日じゃん!!
昨日の晩、あせって勉強する必要なかったじゃん!!



2003.04.03

名古屋を出発し、宮崎へ向かう途中での出来事。

羽田へ向かっていると思われる飛行機が、無線で交信をしていた。
えーっと、大島、到着予定、○○分です。」(パイロット)
羽田へ着陸する飛行機は、カンパニー無線で大島上空を通過する時刻を連絡する。
あっ、えーっと、失礼しました。 大島着予定、△△分です。」(パイロット)

言い直してたってことは、計算間違いしたのだろう。
すると、はっきりとした口調の女性の声がした。
分かりました。

あれっ? どっかで聞いた声だなぁ。
しかもやけに大きい声だ。
無線機は2台あり、1台は管制用、もう1台はカンパニー用に使う。
二つとも同時に聞いているが、管制を優先的に聞くので、カンパニー用のボリュームは絞ってある。
ってことは・・・・、あぁ、今の声は女性の管制官の声か♪
いつもは英語でしゃべってるので、日本語で話しても、すぐには同一人物だと分からない。

つい先ほど、私が無線で交信した女性の管制官が、
カンパニー無線と思ってしゃべってしまったパイロットに返事をしたのだ。
随分、愛想がいいなぁ。
普通なら無視されて終わるだけなんだけど。

再び、私はこの女性管制官に呼びだされた。
All Nippon 345. Contact Fukuoka Control on 134.35.
「分かりました♪」
と、本当は言いたかったが、やっぱりやめた。
「All Nippon 345. Conact Fukuoka Control 134.35. GOOD DAY♪」

宮崎から名古屋へ戻った。
名古屋空港へ向けて降下を開始した忙しいときに、丁度客室乗務員(CA)にインターフォンで呼びだされた。
「はい、、」
CAに返事をしかけた瞬間、管制官に呼びだされた。
管制官に呼びだされたら、CAには待ってもらわなければならない。
「すみません、ちょっと待っ」
シムワァットァァァアアア〜〜〜〜ッ!!
CAに「ちょっと待ってください。」と言おうと思ったのに、管制の周波数でしゃべってしまった!
でも、最後まで話しきる前に気がついたから、まだマシか。

インターフォンでCAに待ってくれるよう頼み、
その後、インターフォンを無線機に切り換え管制と交信するはずが、
先にインターフォンを無線機に切り替えてしまった。

この一連の動作を2秒ほどの間に左の人差し指一本で行う。
はい、   ×  ちょっと待ってください  ○ 「All Nipponn 348. Direct KCC.」
 「All Nippon 348. Proceed Direct Nagoya.」(管制官)
時系列でみると、↑こんな↑感じだった。
インターフォンと無線のスイッチ切り替えを
「○」の位置でするのが正解、「×」の位置でするのが間違いだ。

切り換えボタンを押してから送信ボタンを押し、口を動かすまで、0.1秒ぐらいの間隔で操作する。
その間も、(窓の)外や計器を見たり、キャプテンが何をしてるのかにも気を配らなくてはならない。
だから時々間違ってしまうことがあるのだ。

気をつけなくっちゃ。。。。



2003.04.04

スーパーへ買い物に行った。

沢山あるレジの中で、最も早そうなレジに並んだ。
並んでいる人数が同じなら、狙い目は、オジさんが多い列が良い。
少量の買い物しかしていない場合が多い。
また、レジ係りのテキパキとした動きも目安になる。

今日もベスト・ポジションと思われる列に並び、安心しきってボーッとしていた。。
すると、私の次に並んだ女性が、隣の列に移動したのに気がついた。
?????
そういえば随分と時間がかかる。
前の人はもう行ってしまったのに・・・・・。
レジへ目をやると、なんとぉーっ!
紙切れ(レシート切れ)で交換してるではないかぁーーーっ!!!
これは、とんだ不測の事態発生だ!
それで、後ろの女性は隣に移ったのかぁ。
しっかり見ときゃ良かったなぁ。
そうすれば、私が隣の列に移動したのに。

移動した女性は、私の正面でとっとと会計を済ませてしまった。
失敗したぁ〜。
後悔の嵐、炸裂だ。

やっと私の番になった。
買った商品の全ての計算が終わり、お金を出そうとすると、
レジのオバさんがボソッと言った。
あら? 納豆、半額だったのね。
不幸なことに、レジで一品だけ計算し直す方法が分からなかったようで、
全品を通し直すこととなり、かなり時間がかかってしまった。

家に帰り、レシートをチェックすると・・・・、
あれぇー? さっき半額にした納豆、定価は158円だったのに128円って打ってるぞ。
ラッキィ〜♪
158円の半額−128円の半額=15円 も得したわけだ。
多めに取られてたら、たった15円のためにスーパーへ戻る羽目になり、かなり腹が立つが、
少なめだったらわざわざ戻る必要もあるまい。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

友人のアメリカ人で、お医者のおじいさんがいる。
彼から聞いた話だ。

レジで品物を安く計算されたときは、決して自分からそれをレジ係りに言ってはならない。
レジ係りはレジのプロなわけで、間違えたのは相手が仕事をちゃんとしていないから。
それで自分が得をするのは当たり前のこと。

これは私にも理解できる。

例えば、陳列棚の商品の値札が間違っていたとする。
本来なら200円のものに、誤って100円の値札がついていた。
そのお店は、この商品を100円で売らなければならない、と彼は言う。
その商品を最初に見つけた人は100円で買う権利があり、
お店はその人が買った後に、値札を200円に戻すことができる。
売り手は表示されている値段で売る義務があるのだそうだ。

こんなこと、日本では決してないだろう。

さらには・・・・・、
腕時計売り場でセールスマンに時計を見せてもらった。
そこへ別のお客さんがやってきて、
他のショーケースに入っている商品を見せてくれるようにその店員に頼んだ。
店員は彼のもとを離れて向こうへ行ってしまったので、
彼は見せてもらっていた商品をそのまま持ち帰ってしまった。

これって万引きではないのかっ!!

彼曰く、店員は彼に見せていた時計をしまってから向こうのお客さんのところに行くべきで、
商品を手渡したままその場を離れたセールスマンは、彼のすべき業務をしていない。
お客は、店員がその商品をくれた、と勘違いしても仕方がない。
だから、彼のした行為は万引きではない、と彼は言う。

う〜〜〜ん・・・・・。
彼が正しいのかどうか?
一理あるようだが、屁理屈にも聞こえる。
国によってはそういった解釈をするところもあるのかもしれない。

そういえば、電子レンジが売られ始めた頃、
散歩に連れて行った犬が雨で濡れてしまい、
レンジで乾かそうとして犬が焼け死んだとき、そのアメリカ人はレンジ・メーカーを訴えたという。
しかも勝訴。
取扱い説明書に、
「ペットをレンジに入れないでください」、という注意書きがなかったことが問題になった。

文化の違い?とは恐ろしいものだ。

私の友人のアメリカ人は、決して非常識な人ではなく、
ベトナム戦争でマリーン(海兵隊)の軍医として勤め、勲章をもらったほどの人物である、
ということを、彼の名誉のために付け加えておく。



2003.04.05

大阪と高知、関空の間をパタパタと5便飛ぶ勤務だった。

低気圧はかなり関東の方へ過ぎ去ったが、上空には寒気が入り、
カンパニー無線を聞いていると、どの高度も揺れたようだった。
計器が示す風向、風速、気温の変化を見る限り、
それほど悪い気象条件ではないように思えたが、どうしたわけかボコボコに揺れた。
上げたり下げたり、高度を変えてみたがさっぱりだった。
しばらくは気流がスムーズだったのに、雲があろうとなかろうと、いきなりガタガタ揺れ出し、
予測不可能なタービュランスだった。

無線で交信する声が震えたり、ときには裏返るほどの揺れに、気分を悪くした子供もいたようで、
高知の地上係員の部屋には、壁にもたれ掛かるように少年がうずくまっていた。
彼はGHさん達に囲まれて介抱されていた。
可哀想なことしたなぁ・・・、
でも、ちょっと羨ましい・・・・・。

ごめんなさい。
どうすることもできませんでした。
これに懲りて飛行機嫌いにならないでね。


A320の機内に搭載されている絵本の中に「美女と野獣」があった。
シンちゃんが生まれたこともあり、絵本もいずれ読んであげるのかなぁ、と読んでみた。
これが意外と面白かった。

たまたま今日の夜、テレビで「美女と野獣」をやっていたので、見ることにした。
昔から聞いたことのあるタイトルだが、
私はてっきり普通の映画か、演劇のようなものかと思っていた。
しかし、予想に反してディズニーのアニメだった。
登場人物は機内の絵本と同じだった。

なぁ〜んだ、アニメか・・・・・。

チャンネルを代えようか、とも思ったが、他にすることもない。
テレビの前にイスを移動し、支給された弁当を食べながらボーッと画面を見ていた。
ところが、次第にストーリーに吸い込まれてしまい、
最後は完全に集中して見てしまっていた。
アニメとはいえ、バカにはできない。

心温まる内容のこんな感じのアニメ、いつになったらシンちゃんと一緒に見れるようになるかなぁ〜。



2003.04.06

夜間に新潟空港へアプローチした。

キャプテンはビジュアル・アプローチでとっとと降りたかったようだったが、
前に大韓航空がおり、それに続いてILSをさせられることになった。
空港は見えているので、大韓航空機を見つければビジュアルを管制官にリクエストできる。

どこだ? どーこーだぁー?
なーんで見えないの?
こんなに視界がいいのに、普通、見えるだろ?
さっきから5分も探してて、どうして見つからないわけ?
ったく、おっかしいなぁ〜。
こんな天気がいいのに、ILSなんてやりたくないよなぁ〜。
やっぱ、ビジュアルっしょ?

「なんで見えないんでしょうね?」
そうだよね。 オレもずっと探してるんだけど、見えないよね。」(キャプテン)

諦めかけたとき、滑走路の延長線上に見えたっ!

「いたぁーーーっ!!」
えっ? どこ? 見えた? どこどこ?」(キャプテン)
「10時くらいの方向です。」
と、私は腕をその方向に伸ばした。
・・・・・・・・、あっ、見えたっ! OK、ビジュアルもらって。」(キャプテン)

Follow Korean Air Boeing737. Clear for visual approach Runway28.」(管制官)

そっか、B737だったから小さくて見えにくかったのか。

ILSだと大回りに飛ばなくてはならない。
ショートカットをして滑走路へ向かった。

滑走路末端を過ぎ、タイヤが接地し、リバースを作動、ブレーキが効き・・・・、
すると、突然前方、滑走路上に2つの物体が見えた。
左から右へ動いている。
飛行機はものすごいスピードでその物体に向かって進んでいる。
それはモコモコしており、トコトコ、走ってる?
あれ、タヌキか?
こらぁーっ! どけぇ〜。

それほど速いわけでもなく、遅いわけでもなく、適度なスピードでモコモコ走り、
滑走路の右端を出て草むらに消えていった。
その数秒後、飛行機は動物が通った場所を通過した。
危なくひき殺すところだった。

地上滑走の速度まで減速し、滑走路の外へ出てから言った。
「あれって、タヌキですかねぇ。」
なんか、そんな感じだったね。」(キャプテン)

昼間だったら、もっとよく見えたろうに。
ちょっと残念。
でも、ぶつからなくて、良かった♪



2003.04.09

シンちゃんの右の鼻の穴に、膜を張ったように鼻くそがこびりついていた。

花粉症で鼻が半分ほど詰まっているときに鼻呼吸するとスースー音がするが、
シンちゃんも呼吸するたびに同じような音がする。
でも、穴の奥深くにあるので、前に出てきてから引っ張り出せばいいか、と思っていた。

しかーし、なかなか出てこない。
細めの綿棒でほじくり出すにしては、結構奥深い所にある。
妻は恐がって綿棒を鼻の穴に突っ込もうとしない。
それで、仕方なく赤ちゃんグッズ店で「鼻水トッテ」という、鼻くそを吸い出す器具を購入。
使ってみたが、全然効果なし。

そこで、綿棒によるかき出し作戦に私がトライすることにした。
赤ちゃんはイヤがってか、痛がってか、ギャンギャン泣くし、
そんなに突っ込んだら赤ちゃんが可哀想、と妻には言われるし。
「大丈夫、大丈夫、死にゃーしないって♪」

綿棒を鼻の穴に突っ込み、鼻くそを内壁に推しつけるように引っ張り出したが、
シンちゃんがイヤがって暴れるから、すぐに奥に戻ってしまう。
何回かやってみて、ようやく先端が外に出てきた。
さらに綿棒を使ってみたが、鼻くそは意外と長いようで、奥まで繋がっている。
しゃーない、指を使うか。

人差し指と親指で鼻くそをつまみ、途中で切れないように引っ張ると・・・・、
ナントォォオオーーーーッ!!!!!!
出てくる、出てくる。
その長さ3cm!
赤ちゃんでこの長さだと、喉まで繋がってたんじゃないか??

シンちゃんはギャンギャン泣きじゃくっていた。
妻も私も長〜い鼻くそにビックリして、しばらくゲタゲタ大笑いしていたが、
ふと気がつくと、シンちゃんは、キョットーン、と放心状態になっていた。
その表情に再び大笑い。

とーちゃん、何も恐がらないでやってくれるから、こういうときに便利だなぁ。」(妻)

とーちゃんの偉大さ?を改めて認識し、愛が深まったようだった??



2003.04.10

416便(高知 → 伊丹)の出発時刻が近づくと、客室乗務員(CA)にインターフォンで呼ばれた。
最後の1名のお客さんを待っているのだが、
そのお客さんと、見送りのお客さんの間でトラブルが発生している、とのことだった。
それって、どういうことだろう?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

私の知り合いは、海外へ長期滞在に行くとき、彼女にわざわざ見送りに来ないように言った。
ところが来てしまった。
しかも二人。
もちろん、広いターミナルの中で、彼の周辺だけが修羅場と化した。
彼を見送りに来た両親が、二人の彼女をなだめて、無事、出国カウンターへ向かうことができたのだった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

搭乗予定のお客さんと見送りのお客さんの間でトラブル、と聞くと、
どうしても友人のハプニングを思い出してしまう。
それ以外にトラブルの原因になるような出来事って、果たしてありえるだろうか?
キャプテンもどういった状況か理解できなかったようで、???、という表情をしていた。

最終的には、そのお客さんは乗せずに416便は出発することになった。


417便で高知に戻った。
仕事はこれで終わりだ。
ディスパッチへ行くと、ディスパッチャーが口を開いた。
先ほどはご迷惑をおかけしました。
「えっ? 何のことですか?」
さきほどカットしたお客さんですが、詐欺師だったんですよ。
「え゜っ??!!」

若い女性が、搭乗する予定だった男性と、以前、何かの取り引きをした。
銀行に3か月ほど前、お金が振込まれるはずだったが、その振込みがない。
そこで、彼女はこの男が乗る飛行機を調べ上げ、飛行場で待ち伏せしていた。
男は彼女を知らない、自分は関係ない、と言い張ったが、女性は食い下がり、
結局、男は416便に乗り損ねてしまった。
最終便418便に男は乗ることにしたが、女性が頑張り、警察に連れて行かれ、
そこで男は詐欺を認めたとのこと。
もちろん418便にも男が乗ることはなかった。

そんな訳で私の想像を絶するストーリーだった。

ビックリ仰天だったが、男が罪を認めたのは、きっと女性にとっては良いことだったのだろう。
一件落着といったところか。


高知空港からホテルへの帰り道、コンビニに寄った。
キャプテンはビール、食料等々、買い物袋一杯、買い込んでいた。
今日はビール飲みながら野球を見て、その後、マンガを読もうっと。」(キャプテン)
とっても嬉しそうな52歳のキャプテンだ。
「へぇ〜、マンガ読むんですか?」
このマンガ(ビックコミック)は20歳のときから欠かさず、ずっと読んでるんだ♪」(キャプテン)
ヘェェエエエ〜〜〜〜〜〜ッ!!

私はいつまで少年ジャンプや少年マガジンを読むのだろうか?
60歳になっても、70歳になっても読んでたら、
他人が見たら、きっとおかしな光景なんだろうなぁ・・・・。


途中、運転手さんとキャプテンとの話の中で、「ロンパリ」という言葉が聞こえた。
「『ロンパリ』ってなんですか?」
え゜ぇ゜ーーっ!? 知らないの?」(キャプテン)
「何の訳ですか?」
ロンドン、パリだよ。 本当に知らないの?」(キャプテン)
「ええ、初めて聞きましたよ。 『ハイカラ』っていう意味ですか?」
運転手さんが大笑いした。
片目でロンドンを見て、片目でフランスを見る、つまりてんでばらばらっていうことですよ。」(運転手)
「ふーん、てんでばらばらねぇ・・・・。 考え方が支離滅裂の人のことですか?」
また笑われてしまった。
キャプテンも運転手さんも、はっきりどういう意味なのか教えてくれない。
内容から察するに、どうやら両方の目が外に向いてしまっている人のことらしい・・・・
って、完璧に差別用語じゃん!

高知では 「ひんがらめ」 と言うのだそうで、関東で言う 「がちゃめ」 のこと。
ただ、これらの言葉は目が外を向いている場合と、内を向いている場合の両方を指す言葉だが、
「ロンパリ」 は外向き専用の言葉だそうだ。

その後、最近では 「ロンパリ」 をマッサージだけで治すことができるのだ、という話になった。

私の親父は、65才の頃、今まで普通だったのに、いきなり「ロンパリ」になってしまった。
全ての物が2つに見える。
道路の白線まで2本に見えて危険なので、運転を控えている。
そんな時期が父にはあった。
とても心配だったので、東京の航空身体検査医を紹介し、診断してもらったが、
しばらくして、いつの間にか治っていた。
あれって何だったんだろう?
未だに不思議な出来事だった。



2003.04.11

今日は午後からの仕事だ。
高知のホテルに泊まるこのパターンは、今月既に3度目。
というか、このパターンしかついていない。

新聞の番組欄を切り取り、テーブルの上に置いておいた。
ところが、電話の位置を移動した拍子に、テーブルの後ろへ番組欄が落ちてしまった!
テーブルを移動させてみよう。
しかーし、動かない。
あ〜ん、出勤まで何の番組を見て暮らせばいいんだぁ〜〜〜。
分からんじゃんかよぉ〜〜〜。

いんや、待てよ。
そんな事よりも、いつか何年、何十年してホテルの部屋を改装をするとき、
黄ばんだ古〜い新聞の番組欄が出てきて、
しかもバカ番組に赤いボールペンで丸印がつけてあるのを誰かが発見したら、
メッチャ格好悪い、悪すぎ〜〜〜〜〜♪



2003.04.12

高知空港のディスパッチにShow Up(出頭)すると、昨日の詐欺の話になった。
どうやら、男と女性は和解したらしい。
和解した、ということは、詐欺師が詐欺を認め、お金を支払った、ということだろう。
良かった、良かった。



2003.04.13

名古屋のホテルは玄関やフロントを見るかぎり、とても豪華な感じだが、
施設は意外と古いのかもしれない。
昨晩、一度停電したが、そのときはたまたまかと思っていた。
ところが、今朝になって2回も停電したのには驚いた。

名古屋のホテルをチェックアウトして、キャプテンと合流した。
ホテル、いつもよりいい部屋じゃなかった?」(キャプテン)
「そうですか?」
部屋にもう一つドアがあっんだよね。 防音用に。 じゅうたんも良かったなぁ。 
 冷蔵庫とドリンクバーも別のコーナーだったし。 そんなことない?
」(キャプテン)
「いえ、全然そんなことないですよ。 僕の所なんて、停電が3回もあってビックリしましたよ。
 そうそう、カーペットがいつもみたいに毛の長いやつじゃなくて、
 ほら、よくスーパーとかに売ってる一番安い感じの
 毛の短いアクリル製のカーペットあるじゃないですか?(うちのカーペットと同じ♪)
 まさにあんな感じで、しかも日に焼けて色あせてましたよ。
 そうそう、冷蔵庫もいつもと違うところにあって、そのせいか、ポットの電源が取れなかったんでしょうね。
 テーブルの正面の鏡の下にコンセントがありますよね。
 そこに、古〜い二股のコンセントがついてて、それにポットと加湿器がさしてあったんですよ。
 テーブルに座ると体の真正面にコンセントと電気コードが2本も出てて、
 本も新聞もテーブルの上で開けませんでした。」
テーブルもやけにでかかったなぁ。 いつもの3倍はあったぞ。」(キャプテン)
「それは良かったですねぇ。
 そうそう、僕の部屋はバスルームの上の方の塗装ははげまくってましたし、
 壁と配管の穴がずれててコンクリートが見えてました。」
はははは。 ふ〜ん、そうなんだぁ〜。 そういえばバスローブもついてたなぁ〜。
 そうそう、お風呂に通気孔があるじゃない? あれと同じのが客室にもあったなぁ。
 きっと新鮮な空気がいっぱい取り込めるようになってるんだろうなぁ。
」(キャプテン)
「何も自慢することないじゃないですか? 別にキャプテンの持ち物でもないわけだし。」
窓も開いたなぁ。 名古屋のホテルって、窓、開いたっけ?」(キャプテン)
「え゛ぇ゛ーーーーー。 いいなぁ〜。 名古屋は窓は開きませんよ。
 今日、雨が降ってたじゃないですか? 本当は窓を開けたかったんですよね。
 なんか部屋に花粉が残ってるのか、部屋にいると鼻が詰まって息苦しいし、
 鼻水も出るから鼻をかみまくってました。
 雨が降ってるとき、窓を開けると完全におさまるんですよねぇ。」

キャプテンは嬉しそうにニタニタ笑っていた。

週末、連休など泊り客が多く、いつものグレードの部屋をホテルが用意できない場合、
たま〜に、メチャメチャいい部屋にアップグレードしてくれるが、
当然、キャプテンから先にアサインされる。
そのたびに自慢話に花が咲く。

私はタバコ臭くなければどんな部屋でも構わないが、
キャプテンの話に付き合って、いい気分に浸らせてあげるのもコーパイの役目。
自分の部屋がいかに汚かったか自慢すれば、キャプテンがさらに喜ぶのは不思議なものだ。



2003.04.17

アンビリーバボーで飛行機事故の話が取り上げられると、
最近、元全日空のキャプテンをしていた高野氏が解説者として登場するが、
今日のアンビリーバボーでも出演していた。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

入社試験の最終面接の5人の面接官のうちの一人が高野さんだった。
入社後、私が配属された部署の部長が高野さんであることを知った。

会社で高野さんと初めて話をする機会があったとき、彼が言った言葉は、
オレさぁ、オマエは絶対落としてやるつもりだったんだよ。
 ○○高校の出身、というのが気になってな。
 でも、他の面接官が『OK』と言ったから受かっちゃったんだな。


高野さんは気さくな人で、誰とでも親しく話をする方だ。
あの人の高笑いが、私はとても好きだった。

入社して間もない頃、エレベーターホールで高野さんと一緒になった。
エレベーターに乗るときは、下っぱは遠慮し、上司の後に続いて乗る、という
今考えれば当たり前なことを、当時の私は知らなかった。
人間、みな平等。
そう考えていた礼儀知らずの私は、エレベーターのドアが開くと同時に中に入ろうとした。
高野さんも同時にエレベーターのドアに向かって一歩踏み込み、
太目の体型をした高野さんと私は、ドアとドアの間に挟まってしまった。
エレベーターの中にいた女性社員は、唖然として私達二人の顔を見比べていた。
高野さんと私は、一瞬、目が合い、高野さんの高笑いがエレベーターホールに響き渡った。

あるとき、私は書類のコピーをしていた。
そこへ高野さんがやってきて言った。
おい、今日、仕事終わったら、メシ、食いに行かないか?
「すみません。 私、忙しいんで。」
どんな用事が入ってるんだ?
「ジムに行こうと思ってます。」
ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。
高笑いとともに、高野さんは去っていった。

それから数分後、まだコピーが終わらない私のところに高野さんがやってきて言った。
Sと一緒にメシ、食いに行くことにしたから、いいも〜ん。」(S君は私の同期)
(そっかぁ〜、それほど誰かと一緒にご飯を食べたいほど、退屈してるのかぁ〜。 可哀想な人だなぁ・・・。)
「そうっすか。 良かったですね♪」
ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。
再び高笑いとともに、高野さんは去っていった。

ある日、事務所の窓から私は外を見ていた。
視線を遠くから近くへ移すと・・・・・・、ビルの真下に黄色い車が留まっていた。
天井の部分には 「CAB」 と大きな黒い字で書いてあった。

ふ〜ん・・・・・、なんでこんな所に 「キャブ」(ニューヨークのタクシー)があるんだろう?

そこへ高野さんがやってきた。
おい、オマエ、何やってんだ?
「いえね、あそこに黄色い車が留まってるじゃないですか?」
うん、で?
「なんでキャブがこんな所にいるんですか?」
キャブかっ?! キャブっ?! キャブっ!? ハァーッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。
「CAB」 が何であるかを教えてもくれずに、高野さんは高笑いとともに去っていった。

ちなみに、「CAB」 とは 「キャブ」 のことではなく、CAB= Civil Aviation Bureau = 航空局
「航空局」 の略だったのだった。

入社して9か月ほどして、パイロットになるため基礎訓練が始まった。
およそ2年後、訓練が終わり、私は再び同じ部署に配属された。
高野さんは別の会社の役員になっていた。

高野さんは、他社の役員になった後も、ちょくちょくうちの会社に顔を出していた。
そして、私に会うたびに言った。
おう、オマエ、まだ会社、辞めてなかったのか?
「そうですよ。 まだまだしぶとくいますよ。 危ないときもありましたが、まだ首にはなってません。」
ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。
お決まりの高笑いとともに、高野さんは去っていった。

私の働く部署には大きなホワイトボードがある。
そこには、昨日のうちの会社の全路線の搭乗率が書いてある。
どの数字も、儲かっているのだろうか?と疑問に感じるほどの数字だったが、
中には搭乗率の高い、珍しく儲かっている雰囲気丸だしの路線があった。
それは、羽田の発着路線と・・・・、
????? この漢字、何て読むんだ?
いたん??

そこへ現役部長がやってきた。
高野さんの後釜だ。
おう、何を熱心に見ているのかね?
「えぇ、羽田と 『いたん空港』 って、儲かるんですね♪」
今、何て言った?
「はい、羽田といたん空港。」
ハァーッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ、ハッ。
現役部長さんは、とても穏やかなイメージの人だっただけに、高笑いには少し驚いた。

近くにいる人に私は聞いた。
「これって、いたん空港じゃないんですか?」
ハ、ハ、ハ。 「いたん」 じゃなくて 「いたみ」(伊丹)だよ。

今、思えば、数々の無礼、非常識に、私って、どうしてもっと早くに首にならなかったんだろう?
そう思わずにはいられない。



2003.04.18

昨日、今日と、シミュレーターの付き合いだった。
付き合い、といえば、普通はフライトをする人の付き合いだが、今回は教官の訓練の付き合いだった。

シミュレーターでは、教官が色々な緊急事態や故障を設定し、飛ばしている訓練生が対処する。
その教官も、始めは初心者教官であり、シミュレーターの使い方を学ぶのが今回の訓練だった。
飛行機が飛んでいなければ色々な故障を入れることはできない。
その飛ばす役が私だった。
つまり、私は実験材料、モルモットだったわけだ。

シミュレーターに乗っていると、通常よく起こる故障は決まっているのだが、
今回は教官の訓練のため、どの様なハプニングを設定することが可能なのかを実験することに意義がある。

それは、それは色々なことが起こった。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

副操縦士は通常右席に座り、右手で操縦桿を握る。
今回は左席に座らせてもらい、左手で操縦桿を握ったが、とてつもなく違和感があり、操縦しにくい。

昔、志村けんのお笑い番組でやっていた。
志村けん 「右手はお箸を持つ手、左手は乳首を持つ手。」
石野陽子 「そうじゃないでしょ。 左手はお茶碗を持つ手でしょ。」
そんな会話があったが、左手と右手ではまさにそのぐらい役割が変わってしまっており、
操縦がうまくできなーっい!

しかもシミュレーターの特性上、地平線はわずかに右に傾いており、
水平飛行の状態だと飛行機が左に傾いている感じがする。
そこで、飛行機を水平線に合わせると飛行機は右旋回してしまい、
もとに戻すために左に傾け、まっすぐになったと思われるところで、再び水平線に合わせてしまう。
これを繰り返すため、なかなかまっすぐ飛べずフラフラしてしまう。

まぁ、なんだかんだ言っても言い訳にしかならないのがプロの辛いところだ。

これで飛べるかなぁ。
ひっでぇ〜。
といった会話が時々聞こえてきたので、フライトの出来、不出来は言わずと知れている。

はっきりいって、ボコボコに打ちのめされた感じだったが、
私にとっては勉強になった?ような気がする一方、
かえって自信を失ってしまったような気もした二日間だった。

これは・・・・・・、イジメだぁぁぁあああぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜っ♪



2003.04.19

シミュレーターへの付き合いには、YS−11時代に使っていたフライトバッグを持って行った。
シミュレーターに使う持ち物は、通常のフライトよりう〜んと少ないので、一回り小さいYS−11のカバンで充分だった。
また、YSのフライトバッグは紙製でカバン自体が軽く、持ち歩くのに便利だ。

ダンボールのような紙でできているのだが、水に濡れても大丈夫なようにコーティングしてあるこのカバン。
紙同士は糸で縫って繋げてあるのだが、どうみてもチャチな作りだ。
しかし、なかなかの優れモノで、一杯一杯に本を詰め込んでも壊れない。

YSのフライトバッグを持って、羽田空港内を歩き回った。
回りにはアタッシュケースやハードケースのカバンを持った旅客も多い。
彼らの持つカバンは、どこか高級そうに見える。
恐らく中にはブランド品もあるに違いない。
そんなカバン達に紛れて、私の紙製のフライトバッグは、とてつもなく貧相に見えた。

暑がりの私は、まだ春だというのにジャケットを着ていないし、手に持ってもいない。
制服のシャツとネクタイだけで歩き回っていたが、もちろん半袖だ。
ヨレヨレの制服ズボンと半袖のYシャツに紙製のカバンを持っている自分を
トイレの鏡で見たとき、どこかみすぼらしく感じたのは、きっと気のせいだろう。



2003.04.20

シンちゃんは最近、よく声を出す。
義母に言われた。
シンちゃんも、ようしゃべるわぁ〜。」(義母)
「も」ってどういう意味やねん??!!

妻は言った。
「シンちゃんも唇が何センチ出っ張ってるのか、測られちゃうのかなぁ?」(妻)

あれは小学校5年生の頃だったろうか?
授業中におしゃべりを止めるように何度も先生に注意されたが、私のおしゃべりは止まらなかった。
しまいには、その女先生に前に来るよう言われた。
ハイ、横向いて。」(先生)
今は懐かしき竹製の定規を取り出し、私のアゴに垂直に(床に平行)立てた。

同じクラスのみんなの視線は私に向けられていた。
目立ちたがり屋の私だが、このときばかりは全然嬉しくなかった。
1cmは唇、出っ張ってるわ。
 そんなにしゃべってると、どんどん出っ張ってちゃうぞ。 いいのか?
」(先生)
「・・・・・・。」
ハイ。 戻ってよし。」(先生)

その後、私のおしゃべりは止まった。

妻に聞かせた私の数々の「恥ずかしいストーリー」。
他の大事なことはすぐに忘れるのに、こういうことは絶対に忘れないようだ。



2003.04.21

用事があって、大家さんに電話をしようとした。
手書きの電話帳を開き、電話番号を探した。

あった、あった。
え〜っと、・・・・・
ヘェ〜、珍しいじゃん。
下4桁がうちと同じ番号なんだぁ〜。
んっ?
上3桁もうちと同じ番号じゃん。
ふ〜ん・・・・・・・・。
へっ?
って、これ、うちの電話番号じゃん!?

「なぁなぁ、大家さんの電話番号んとこに、うちの電話番号書いて、どうすんだよ?」
えっ? え゛ぇ゛ーー! ほんとぉ? それでこの前、何度かけても繋がらなかったんだぁ〜。」(妻)

大丈夫かぁ〜?



2003.04.26

昨晩、会社からスケチェン(スケジュール・チェンジ)の電話があった。
昨日は高知の天気が悪かったらしく、初便の401便以外は高知に着陸できなかったようで、
それに関連したスケチェンだった。

当初、伊丹 → 宮崎 → 名古屋 → 宮崎 → 名古屋 だったが、
関空 → 高知 → 伊丹 → 高知 → 関空 → 福岡 → 名古屋 になってしまった。
最初の 関空 → 高知 はフェリー(飛行機を空で飛ばす)。
高知 → 伊丹 の初便(402便)用の飛行機が高知になかったので、その移動だ。
そして、最後の福岡 → 名古屋 は便乗で移動するだけ。

オリジナルのスケジュールでは、家を5:50に出て、勤務終了が14:10。
スケチェン後では、家を5:00に出て、勤務終了が15:10。
若干勤務時間が長くなってしまったが、何が辛いって、朝、4:20に起きるのが一番辛いはずだった。

ところが、最近、シンちゃんに合わせて、休みの日も毎日21:00に寝て、
朝5:00〜6:00に起きるのが習慣になっている。
昨晩は20:00にベットに入ったが、問題なくスッと寝ることができた。
それは良かったとして、今朝は2:50に目がパッチリと覚めてしまい、全然寝れなーい!

てなわけで、朝、2:50から家を出る5:00まで起きていた。
これだけ時間があるにも関わらず、家を出る直前にトイレにたてこもってしまい、
結局、コーヒー飲みかけ、朝ご飯食べかけ、服はそこらじゅうに脱ぎ散らかしたまま家を出た。
出しなに郵便箱をチェックすると、新聞もなーし。
あ〜あ。
何で、こんなに朝早いの?

関空 → 高知 のフェリーで、高知空港へアプローチを開始した。
管制の周波数が代わって、高知の管制を呼びだすと・・・・、返事、なーし。
んっ?
空港の運用時間は7:30。
まだ飛行場は営業時間外だったわけだ。

7:30になると、管制官が私達を呼び出してくれた。

おはようございますぅ〜。

Runway 32へのファイナル・ターン中、全日空機の無線交信が聞こえてきた。
聞きなれない便名・・・・・・。
あっ、そっか、全日空も高知空港に初便(東京行き)用の飛行機がないんだ。
可哀想に。
彼らは羽田からフェリーして来たのだろう。
ってことは、私達より家を出るのは早かったに違いない。
お疲れ様です♪

402便は定刻を大幅に遅れて出発したが、福岡に到着したときはほぼ定刻だった。



2003.04.27

名古屋 → 福岡 → 那覇 → 新潟 → 大阪

名古屋空港の使用滑走路は34だった。
ターミナルを右手に眺めながら滑走路へ向けて地上滑走をしていくと、
飛行場の境界線であるフェンスに近づく。
そこにはゴールデンウィークに入っているせいか、いつもより沢山の見物人がいた。
子供が二人、親らしき人とこっちを見ている。
よっしゃ、手を振っとくか。

私が手を振っていることに親がまず気がつき、子供に教えると彼らは思いっきり手を振り返してきた。
反応があると嬉しい。
私もさらに大きく手を振ると、そばにしゃがんでいたおばちゃんも手を振ってきた。
ノリのいいおばちゃんに、私は上機嫌になった。

今日はスケジュールを見ただけで嫌気がさすほどきついパターンだが、
おばちゃんのおかげで少しだけ気分が良くなった。

ありがとぉーーーっ!♪

那覇へは久々に行った。
那覇で終わりのパターンなら、海へ行くこともできるので心はルンルンだが、
とんぼ返りで戻らなくてはならないので、眼下に広がる海を見てもワクワクしない。

このへんって、サメが出るのかなぁ・・・・・・。

いつもは考えないようなことを考えてしまう自分。

着陸5分前になって、コックピットのドアのすぐ後ろで、バタンッ、という音がした。
ありゃ? 誰か、トイレに入ったぞ?
すぐに客室乗務員(CA)がインターフォンで呼んできた。

お忙しいところすみません。
 お客様が気持ち悪くなってトイレに入り、中からカギをかけてしまいました。
」(CA)

まいったなぁ。

「キャプテン、どうします?」
う〜ん、着席してくれないと着陸できないから、間に合わなかったらゴーアラウンドしようか。」(キャプテン)
「そうですね。」
そしてCAに返事した。
「お客さんがお手洗いから出て着席したら、またインターフォンで連絡ください。」

幸い、それから1分ほどすると、お客さんはトイレから出てきてくれて、何事もなく那覇に着陸した。
それにしても、アプローチ中、全く揺れなかったのに、どうして気分が悪くなったのだろう?

那覇を離陸し、新潟へ向かった。
まだ半分かぁ〜。
これが長いんだよなぁ・・・・・。

先行機の高松行きB767も私達同様 33,000feet で飛行していた。
しばらくは気流良好だったが、種子島に近づくと揺れが始まった。
レポート通りだった。
那覇のディスパッチャーは、どの飛行機も我慢できず、低い高度に下げている、と言っていた。
前を飛んでいるB767も 27,000feet へ降下した。
だが、九州上空に広がる雲は入ると揺れそうだし、
20,000feet くらいまで降りなければ、雲の下には出れそうもなかった。
高度を下げれば燃費も悪いし、速度も出ないし、追い風も半分程度になってしまう。

37,000feet はどうかなぁ・・・・・。
あの雲を越えることはできそうだ。
那覇のディスパッチで調べたら、ほとんど誰も FL370 飛んでなかったけど、
天気図を見た感じ、揺れないと思うんだよなぁ・・・・。
BR> キャプテンも同じことを考えていたようだった。
FL370 に上がってみようか。 FL370 もらってくれる?」(キャプテン)

33,000feet から上昇を開始し、35,000feet を過ぎると気流は安定した。
ここまでは予想通りだけど、ここから先はどうかなぁ
36,000feet を通過時も揺れず。
さらに、FL370 に到達・・・・・。
おっ? 揺れないじゃん♪

前を行く高松行きのカンパニー・レポートが聞こえてきた。
どうやら九州上空は FL270 では雲に入ってしまうようで、FL230 まで下ろさなければいけないようだ。
さらに、管制官との無線交信を聞いていると、雲を避けながら飛行しているようだった。

FL370 に上がって良かった、良かった。

ところが、種子島に接近すると、雲の頂上がせり上がってくるではないか。
アリャリャ。 まずいかも。
鹿児島を過ぎ大分まではギリギリ雲にかからずに済み、気流は完全にスムースだったが、
さらに北上すると薄い雲に入ってしまった。
コトコト揺れはしたが、シートベルトサインをつけずに、まだ我慢できる程度だった。
薄い雲の向こうは透けており、青空が広がっているようだ。
すると・・・。
スパッと雲から出て、そこから先は見渡す限り青空が広がっていた!

ヨッシャーッ! もらったゼイ!

追い風はここから少しずつ速度を増し、最終的には 110kt(時速200km)を真後ろから受けた。
速い、速〜い♪
かなり疲れてはいたが、ちょっと気分が良くなった。
高度を下げなくて正解だった。

新潟へ向けて高度を下げる少し前。
女性の管制官の声が聞こえた。
通常管制官は英語を使って交信しており、このときも英語のはずだったのだが、
××××××××××××. エッ? ××××××××××××.」(×は英語部分)

えっ?
今、エッ?って言った?
キャプテンの笑い声が聞こえた。
そうだよな、今、エッ?って言ったよな。
しかも、かなり間抜けな発音で、エッ?って言ったよな。
きっと今頃管制官は、「シマッタァーッ!」 と赤面していることだろう。
そう思うと、笑いがこみ上げてくる。
彼女のたった一言が、疲れていることを忘れさせてくれた。

ありがとぉーーーっ!♪

那覇 → 新潟 では、高度を上げたのと追い風の影響とで、
計画より1100ポンド(500kg)も燃料を節約することができた♪

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家に帰ると、妻から妙な話を聞いた。

日曜日が選挙日だったこともあり、ここ1週間ほど選挙カーの音に悩まされていた。
時間をかけてせっかくシンちゃんを寝かしつけても、
選挙カーが通った瞬間、目をパッチリ開け、オンギャー、オンギャーッ、泣き出してしまう。
いい加減、選挙カーには腹が立っていたが、
最悪なことに選挙が近づくと、わざわざ家の隣の駐車場に駐車して、
スピーカーのボリューム最大にして演説を始めるのだ!

貴様らぁーーーーッ!!! うるせーんだよぉーーーーーっ!!!
何時間かけて赤ちゃん、寝かせつけてると思ってるんだぁーーーーーーっ!!!

そんな毎日をここ数日過ごしていたが、
先日、大音量の選挙演説に混じって、シンちゃんの鳴き声が響き渡ったと、妻は言うのだ。
え゛っ!?
なんでシンちゃんの泣き声が、家の外から聞こえるの?

そのときは、たまたま2階でシンちゃんは寝ており、妻は1階にいたのだが、
シンちゃんが起きたら分かるようにサウンドモニターを使っていた。
(サウンドモニター = 無線で音を飛ばし、別部屋にいても赤ちゃんが泣けばすぐに分かるグッズ)
妻は1階に置いてあるサウンドモニターの音量を絞ったが、
外から聞こえてくるシンちゃんの鳴き声の音量は変わらなかった。
(当たり前じゃ! 2階のサウンドモニター(親機)の電源を切れ〜〜〜♪)

選挙演説が始まってしばらくすると、演説は止まった。
シンちゃんの泣き声だけが演説と同じ音量で近所中に響き渡った。
妻が慌てふためきオロオロしていると、
いつの間にか選挙カーは立ち去り、シンちゃんの鳴き声も聞こえなくなっていた、と言う。
きっと、選挙カーはワイヤレスのマイクか何かを使っており、
音を飛ばす周波数が、たまたまサウンドモニターと同じだったのだろう。

それにしても、ざまーみろ! だ。

次に選挙がある頃、きっとシンちゃんは大きくなってるはずで、もう泣かないに違いない。
でも、サウンドモニターはとっておいて、
演説がうるさかったら、私がサウンドモニターの親機に向かって叫ぶことにしよう。

うるせーんだよぉーーーーーっ!!!