2005.06.01

初めて福島空港に行った。
機長になると空港資格を取らないとその路線を飛ぶことができない。
数ヶ月前に福島の空港資格は取っており、空港の概要は知っていたが、
やはり機長として自分で初めて行くのはドキドキする。
ところが、前回の羽田−能登のとき同様、今回も副操縦士として行くことができた。
なんてラッキーなんだろう♪
今月、もう一回福島へ行く予定。
次は機長として、でだ。
ちょっと楽しみだ。



2005.06.04

上空に寒気が入り、日本列島の日本海側には積乱雲(CB)があっちこちにできていた。

関空→女満別
関空から名古屋近辺を通り新潟へ行き、そこから花巻経由で太平洋に抜けるコース。
長野にあったCBの塊を避けるため、いったん富山へ抜け、そこから新潟へ向かった。
その後はCBに入ることなく、ほぼ気流良好で女満別まで行くことができた。
富山へ迂回する途中、小松近辺にあったCBの壁がとても気になった。
帰りはあの辺を通るんだよな・・・・。
うまいこと避けれればいいけどな・・・・。

女満別→関空
日本海側、とくに小松から鳥取にかけてあったはずのCBがみごとになくなっていた。
35,000feet は気流は完璧にスムーズ。
見渡す限り、日本海側にはCBはなかった。
鳥取から左旋回し、岡山へ抜け、さらに東へ旋回して関空へ行く。
その途中、所々にCBの崩れかけがあったが、
うまいこと避けることができ、ほとんど揺れることはなかった。
日本海側を飛行中、関東のカンパニーを聞いていると、
羽田がCBの直撃を受けているようだった。
確かに太平洋側には、ヤバそうな黒〜い影、または白いCBが見える。
日本海側にあったCB達は、みんな本州を移動し、太平洋側へ集まっているのか?
次に飛ぶのは関空発羽田行き。
とっても心配だった。

関空に到着し、ディスパッチへ行った。
すぐにコンピューター画面上でレーダー・エコー図をチェック。
中部空港近辺、浜松、そして羽田にかけて、真っ赤に映るCBを確認。
マジっすか?
関空→羽田で通る道の上にあるわけね♪
あー、もう、今回もまたうまいこと、どっかに行っちゃってくれないかなぁ〜。
動きを見ると東へ進んでいる感じだ。
羽田に到着する頃までには、羽田空港の上にあるCBは房総半島に移動していそうだ。
着陸は問題なさそう。
代替飛行場の成田がヤバくなる可能性があるので、
関空に戻れるだけの燃料を積んでいる。
ってことはだ、エンルート(巡航)だけうまいこと避けれればいい。
まあ、ちょっと南に避ければなんとかなるはず。
心配なのは、夜になると雲が見えなくなること。
見えていれば避けるのは用意だが、見えないと頼れるのは機上レーダーだけ。
だが、機上レーダーは万能ではない。
レーダーに映らない雲も揺れる場合が多々ある。

関空は Runway 24 から離陸した。
いったん西へ向けて上昇し、12マイル出たところで右旋回し、機首を東へ向ける。
東に振り返るまではCBの感じは分からない。
西に向いた機首が旋回しながら北に向き、そして東に向く。
ちょっとドキドキしながら行くてを見ると・・・・・、
あれっ? CB、ない?
紀伊半島の上のCBは小さくなっており、飛び越えることができた。
中部空港から浜松にかけてレーダーで探してみても映らない。
いや、そんなわけない。
どっかに潜んでるはず。
暗闇が迫りつつあった。
目をこらしてCBを探すが、やはりない。
超ラッキー♪

上昇中からシートベルトサインを消し、そのまま33分、サインをつけずに済んだ。
きっと、客室内でのサービス、やりやすかったことだろう。

関空を離陸する前の羽田のアプローチはILS 34L。
上昇中に確認すると、VOR 22。
エンルートでさらに確認すると、今度は ILS 22 になっていた。


そろそろ着陸まで15分。
着陸10分前の合図にはまだ早いけど、これから先はいつ揺れるかもしれない。
恐らくまだあと5分は揺れないと思うけど、夜で雲が見えないから、
お客さんには悪いけど、早めに10分前を出しておこう。
ILS 22 はアプローチに時間がかかる。
予想外に羽田は混んでおり、なかなか進入を開始できない。
到着時刻はすでに10分遅れ。

CA さんに到着が遅れ気味であることを教えてあげよう。
インターフォンで CA さん達を呼び、状況を説明。
しばらくして CA さんが機内アナウンスを入れた。
その瞬間、管制官に呼ばれた。
This time, runway change. Vector for ILS 34.」(管制官)

ヌワヌィィィイイイイーーーーーッ!?!?!?
冗談じゃないぞぉぉぉおおおおーーーーーっ!!!!!
うちの直前の便まで ILS 22 で、うちも、もうちょっとで ILS 22 に乗れるってのに、
ここまで引っ張って、挙句の果てに ILS 34 だって???
10分前の合図出してから、もう20分も飛んでるのよ??
さらに着陸まで10分もかかるじゃん??

私達の前の飛行機のアプローチを最後に ILS 22 での着陸は終了し、
ILS 34 に切り替わった。
せめて、私達を一番初めに ILS 34 に乗せてくれて、
一番初めに着陸させてくれればいいのだが・・・。
ILS 22 の始まる場所から ILS 34 の始まる場所まで距離がある。
やはり ILS 34 の始まる場所に一番近い飛行機からアプローチが始まった。
うちは3番目か、4番目だった。

結局、Spot in したのは20:36。
定刻が20:15だから21分遅れ。
まぁ、関空 → 女満別 → 関空 → 羽田 まで、
悩まされると思っていたCBの影響を受けることがないラッキーな一日だったので、
羽田へのアプローチの順番と遅れぐらい、良しとするか。
折り返し関空への便が遅れてしまい、ゴメンナサイでした。



2005.06.08

昆陽池には冬は渡り鳥が来ている。
今年のある寒〜い日、人目を気にしつつも休息中のカモをダッコして以来、
シンちゃんは鳥を見ると、「ダッコする」 と言う。
昆陽池の沢山のハトを見ても、「ダッコする」 と言う。
じゃ〜あ〜、チャレンジしてみるか。

沢山の人達がパンで餌付けをしている。
当然、ハト達は群がって一心不乱にエサを食べておりスキだらけだ。
彼らを狙ってとっ捕まえるのは卑怯だと思う。
それに、回りのハト達がいっせいに飛び立ち、エサをあげている人に迷惑だ。
狙うのはエサを食べていない、普通にたたずんでるハトだ。
あくまでも差しで勝負しなければ意味がない。

どんなハトが捕まえやすいか考えてみる。
地面にいるやつらを捕まえるには、しゃがまくてはならない。
しゃがむと下半身が動きにくいのでリーチが短い。
腰の高さのフェンスにとまっているハトなら、腕も伸ばしやすいし、
ある程度下半身も使えるのでリーチが伸びる。
やつらは逃げるとき、真上または前方に飛ぶ。
バックしながら飛ぶことはない。
私と向き合ってフェンスにとまっているハトの方が、捕まえやすいはず。

そーっと近づいても、手の届きそうな距離になるとほとんどのハトは逃げてしまう。
しかし、中にはなかなか逃げないオマヌケなヤツがいる。
そーっと、そーっと、ほんの少しずつ近づき、
手の届く範囲になったらハトから視線をそらして、
相手が一瞬油断したスキを見計らって・・・・・、みごとにゲット〜♪
こっちを向いているハトが捕まえられたから、
次は、向こうを向いてフェンスにとまっているやつらにチャレンジ。
より逃げやすいわけで、無理かなぁ、と思ったがこれまた見事にゲット。

フェンスに止まってるハトを克服したら、今度は地面にいるハトを狙う。
とはいっても、回りに何もない場所では勝算はない。
どうすればいいか?
後ろにフェンスがあるところならなんとかならないか?
ちょっとずつフェンスに追い込み後ろをふさぐ。
左右にかわそうとしたら上半身を使って、
逃げようとする方向をふさぎ、プレッシャーを与える。
手の届く範囲まで追い込んだら、腰を落とし、
右往左往してるところを正面から襲う。
バシッ、と両手でゲット〜♪
いやぁ〜、これは意外と簡単だぞ。

昆陽池に行くたびに、2、3羽、とノルマを課し、ハトを捕まえるのが上手になった。

今日も昆陽池に行った。
シンちゃんが言った。
ハト、ダッコする。
よっしゃ、ダジー、がんばるか。
エサを食べているハトを子供が脅かした。
いっせいにハト達は飛び立った。
そのうちの一羽がこちらに向かってきた。
とっさに左手が動いた。
ボールをキャッチする感覚で手のひらを閉じたら、
親指と人差し指の間からハトの首が出た状態で、
スッポリ手の中に収まったではないかっ!?!?!?
これにはシンちゃん、大喜び。
もちろんダジーも大喜び。
近くの小学生、ビックリ仰天。


ハトが飛び立つところを、よーく観察すると、やつらはジャンプしてから翼をバタつかせる。
助走はつけていない。
体重が重いので初速度は意外と遅いのだ。
飛び立った直後、高さが目線の辺りを通過するハトをキャッチするのが、一番楽勝かもしれない。
次からはこれにチャレンジしよう。

迷惑そうなハトを、シンちゃん、いっぱいいっぱいヨチヨチ、なでなでした。
そして、もちろんキャッチ・アンド・リリース。
バイバイした。

昆陽池に注ぎ込む、水深5cmほどの人工の小川がある。
小川のふちは高さ30cmほどの石垣になっている。
シンちゃんがそこに腹ばいになって川の水に手を入れていた。
そこから10mほど離れたところに私はいた。
ちょっと目を離し、再び振り返るとシンちゃんの姿がないっ!?
エ゛ッ?!?!
その直後、小川のふち、石垣の下からシンちゃんが立ち上がった。
全身ズブ濡れ、帽子もズブ濡れ、砂が体や顔についていた。
ウ゛エ゛エ゛ェ゛ェ゛ーーーーーーーーーーッ!!!!!!
そっか、落ちたんかぁ〜♪

シンちゃん、あまりにも驚いたのか、立ち上がって、
何があったのか分からずキョロキョロして、私と目が合って、
1秒ほどしてから大声で泣き出した。

お風呂で顔にちょっと水がついただけで泣くもんな。
砂までついて、しかも川に落ちてビックリして、そりゃ〜泣くわな。

笑いながらかけよって、顔を拭いてあげた。
すぐに自転車に乗せ、おうちに帰った。
がーやんに状況を説明した。(シンちゃん語で“がーやん”=“かーちゃん”。私が教えた。)
がーやん、大笑い。
そっか、シンちゃん、川に落ちたんか?」(がーやん)
ちがうっ!」(シンちゃん)
「さっき、落ちたじゃん?」(ダジー)
ちがうっ!!!」(シンちゃん)
ちゃんと会話できてるし、いっちょ前にプライドがあるシンちゃんが、
たまらなくいとおしく思えたのだった。



2005.06.15

仙台に2回行った。
1回目行ったとき、雲は低く 1500feet では On Top。
そこから雲に入り、滑走路が見えたのは 600feet。
2回目も状況は同じだった。

低い雲が海上にあり、恐らく Ceiling は 600ft 程度のはず。
1500feet で水平飛行に移り、ILS のローカライザイーに乗った。
仙台空港に接近し、グライドスロープにまさに乗る、と思われた瞬間、
あれぇ〜、滑走路見えてるじゃ〜ん♪
低い雲がビッシリ海上を覆い尽くしていたが、たまたま ILS のファイナルにそって
3°の Path 上に雲が筒状になかったのだっ!
その光景は、お下品だが、まさに「お○りの穴」のようだった。
すると、コパイが言った。
これって、ケツの穴みたいですねぇ〜。」(コパイ)
おいおい、言っちゃったよ。
言うのを一瞬ためらったら、先に言われたよ。
残念。

「あとで、Insihgt 状況教えてあげよーか?(無線で)
 『Runway insight at 1500feet.』 ってレポート入れたら、きっとビックリするだろうなぁ。」
え゛っ!? 本当に(私が)入れるんですか?」(コパイ)
「うそ、うそ。 冗談だよ。」

仙台のディスパッチに行き、口頭で Insihgt 状況と、コパイの 「ケツの穴」 発言を伝えた。
女性もいたから、引いたかも・・・・・。



2005.06.19

富山空港へはコパイ時代の数年前、ずっと前に行ったことがある。
何回も行った記憶はない。
多分、1回、多くて2回だ。
今年の1月に富山の空港資格を取ったが、機長として初めて今日、富山へ言った。
富山へは福岡のクルーがよく行く。
昨晩、福岡の同期に電話して富山空港の注意事項を聞いた。
すると、出てくる、出てくる。
いっぱい出てくる。
聞いておいて良かった。
実際にアプローチを開始すると、なるほどそういうことか、と思えることがあった。

初めて富山へ機長として行き、ちょっと充実感を味わった直後、
今度は、福岡空港で初めてILS 34を経験できた♪
大した風は吹いていなかったのに、えらく気流が悪かった。
後で同期に電話で聞いた。
ILS 34のファイナルは、いつも気流が悪いのだそうだ。

一日に初体験を2回もでき、実に有意義だった。
でも、疲れた・・・・・。
伊丹 → 新潟 → 福岡 → 富山 → 福岡
羽田ベースのCAさん、この後、羽田空港まで便乗がついていた。
聞かなかったけど、勤務時間は推定11時間以上か。
お疲れ様でしたぁ♪



2005.06.27

最近、飛んでいて異様に揺れることが多い気がする。
天気図を見る限りあまり揺れそうにない場合でも、かなり強烈に揺れることがある。
梅雨の時期にもかかわらず、ほとんど雨が降らないのと何か関係があるのか?

関空のディスパッチで天気をチェック。
東北エリアには前線に伴った厚い雲があった。
Echo Top は 33,000feet ぐらい。
関空 → 千歳 は 37,000feet で飛んだ。
Echo Top より高い高度とはいえ、揺れる雲のそばを飛行して全く揺れないことはない。
新潟を過ぎてしばらくすると揺れる可能性がある、という内容のアナウンスを入れた。
しかし、全く揺れなかった・・・・・。
揺れない、と言っておいて揺れるよりは、
揺れる、と言って揺れない方がまだマシだから、まぁ、いっか。

千歳 → 福島
青森から仙台にかけて、引き続き分厚い雲があり、
かなり広いエリアで Echo が観測されていた。
予定していた巡航高度は 31,000feet。
FL310 に到達後、カンパニーで Echo のエリアを再確認した。
出発前は青森−仙台を結ぶラインより西に Echo があり、東にはあまりなかった。
カンパニーの情報によると、三陸まで Echo が張り出してきている、とのこと。
Echo Top はやはり 33,000feet。
よし、35,000feet まで上がろう。
千歳 → 福島 は距離が短いので、35,000feet まで上がると水平飛行の時間があまりとれない。
しかし、揺れは少しでも弱い方が良いので、上がることにした。
とはいえ、やはり Echo を伴う雲の上を飛ぶわけで、
例え 35,000feet まで上がったとしても完璧にスムースなわけはない。
ところが、今回も全く揺れない・・・・・。
仙台のアプローチコンディションを ACARS で取った。
なになに、24,000feet でかなり揺れるのね。
福島へ向けて 35,000feet から降下を開始し、しばらくしてシートベルトサインを ON にした。
さて、今度は間違いなく揺れるでしょ。
しかーし、またまた揺れないっ!!
もーー、なんでっ??
福島空港へ向けて降下を続け、13,000feet で雲の下に出た。
Cloud Base(雲の底)近辺は揺れることが多いのに、気流は良好。
振り返り Cloud Base の形状を見ると、やはり揺れそうな感じの雲だ。
どーして揺れないのかなぁ〜?
段々、自分の気象解析が信じられなくなってきた。

福島 → 千歳 は、完璧に Echo の中の飛行。
Echo Top 33,000feet のところを 33,000feet で飛ぶ計画。
レーダー・エコー図を見ると、これから飛ぶ航路上に、ばっちり Echo がある。
こんな場合、普通は揺れるから高度を変えようと思うけど、
今日は自分が信じられないから高度は変えずに行ってみよう。
そして・・・・・、やはり全く揺れなかったのだった。



2005.06.30

仕事がらみのある人の話。
腕に輝く鈍い金色の時計が気になった。
アンティークっぽい雰囲気だ。
1m ほど離れてはいたが、目を凝らしてよ〜く見てみると、
秒針の動きがクォーツではない。
自動巻きだ。
時計会社のマークは・・・・・、SEIKO だ!
菱形の一方を引き伸ばした感じの、古いタイプの時針、分針。
気になる。
おせっかいな私は彼に聞いてみた。

「その時計、変わってますね♪」
あっ、これですか?
「ええ、SEIKO の自動巻きですよね?」
はい。 30年前から使ってます。
「30年前ですかっ!? 大切に使ってるのですね。
 オーバーホールされました?」
はい。 2回オーバーホールに出しました。
 クリスタルガラスも1度交換しました。

彼はとても嬉しそうに続けた。
古い型なもので、時計屋さんにも部品が置いてなくて。
 あっちこっち電話してもらって、なんとか手に入れてもらいました。
 30年前に母に買ってもらったんですよ。

私もとっても嬉しくなった。
お母様に買って頂いた機械式の時計を、未だに大切に使ってるなんて。
心の温まる話だ。

そういえば20年前にお姉さんに買ってもらった SEIKO の150m防水のダイバーズを
電池を交換しながら今も使っている人が、札幌のディスパッチにもいたっけ。
私なんか、18年前に買ってもらった同じモデルの SEIKO の200m防水のダイバーズ、
使い方が荒すぎてクォーツ、壊れちゃったもんな・・・・・。

思い出のあるものを直しながら大切に使い続ける。
大事だなぁ〜。