2006.01.03

元旦はスタンバイだった。
一人、病欠が出たため、私が稼動するのかと思ったが、
稼動のパターンは泊りがからんでいた。
私は次の日(2日)が休みなので、私の代わりに福岡の乗員が稼動したようだった。

12月31日は休みだった。
もともと、2、3、4、5日と休みがついていた。
私が間違って休日のリクエストを入れてしまったせいだ。
そんなに長いこと正月に休んでも仕方ない。
スケジュールを作る人にお願いして、今日は仕事を入れてもらった。
その仕事は、後から入れてもらったおかげで、超ラッキーなパターン。
伊丹−大分、一往復のみの2ラン。(2ラン=2 Landings=2路線乗務)

オリジナルのスケジュールは、
伊丹 → 大分 → 伊丹 → 松山 → 伊丹 → 大分 で、大分ステイの5ラン・パターン。
その前半、一往復を分割して、私が飛ぶことになったのだ。
5ランが予定されていたキャプテンにとっては、それが3ランになったのだから、
そのキャプテンにとってもラッキーな話だ。

今日が私にとっては新年初フライト。
元気良くShip(=飛行機)に乗りこみ、飛行前の準備をし、
クルー・ブリーフィングのため客室に出た。
まず、客室乗務員(CA)に、彼女達の勤務が書いてあるメモをもらった。
ゲッ!?
やっぱ5ランだ。
可哀想に・・・・・。
私達が2ランと知ったら、きっと CA さん、聞いただけでドッと疲れが出てしまうだろう。
う〜〜〜〜ん・・・・・、だまっておくか・・・・・・・・。
今日、一緒のコパイさんも、実は2ラン。

クルー・ブリーフィングを終え、コックピットに入り、普通に初フライトが始まった。
大分の天気は、若干強めの山からの西風で、進入中の乱気流が予想されたが、
とくに問題なくアプローチし、着陸した。

コックピットを出て、笑顔で CA さんに、「お疲れ!」と声をかけて、
ディスパッチへ行くために立ち去ろうとしたとき、CA さんに声をかけられた。
あのぉ・・・・・、キャプテン達って、ひょっとして2ランですか?」(CA)
ゲェーーーーーッ!?!?!
なんで、分かったの????
「えっ? あっ、ハイ。 イヤ、その・・・、あ、、、、そうなんです、2ランです。 スミマセン。」
なんだ。 やっぱりそうですか。
 イヤ、おかしいと思ったんです。 やけに元気でテンション高いから。
」(CA)
「バレちゃいましたね。 すみません。 みなさん、5ランですものね。」
違います。 5ランの前にデッドヘッド付きです。」(CA)(デッドヘッド=便乗による移動)
「え゛ぇ゛ーーっ! マジっすか? それは大変だ。 可哀想に。
 僕達、2ランで本当にすみません。」

ディスパッチへ行き、飛行機へ戻り、クルー・ブリーフィングをして、
そのとき2ランがバレてしまったので、一応 CA さん達全員に謝り、そしてコックピットに入った。

「ねぇねぇ、今日、いつもよりテンション高いかなぁ? いつもと同じだと思うんだけど。」
いつもと一緒ですよ。
 ナオさんは、4ランでも5ランでも、天気良くても悪くても、
 いっつもテンション高いですから。
」(コパイ)
「だよね・・・・・。」
って、いっつもそんなにテンション高いんかいっ!?
きっと、高いんだろうなぁ〜。

仕事がつらくても、キツくても、常に明るく笑顔で、楽しそうに仕事をするように心がけている。
だって、私がきつそうな顔して、クルー全体の雰囲気を暗くしたらマズイでしょ?
機長はどんなにしんどくても、いつも笑顔でジョークを飛ばし、クルーを笑わせる存在でいないと。
CA さんを笑わせて、彼女達の気持ちを明るくすることができれば、
彼女達がどんなに疲れてても、お客さんに素敵なスマイルを見せることができるかもしれない。
そしたらお客さんはハッピーだ。
だから、機長はいつも元気で明るくって、クルーをエンターテインしないと。

あっ、でも、やり過ぎは、やっぱり禁物かも。
私の場合、お調子者ばから、すぐに度を超してしまう。
気をつけよーっと。



2006.01.06

新年、初ステイの勤務。
しばらく泊りがなかっただけでなく、朝、早起きしていなかったので、
4時55分に目覚ましにたたき起こされたのは、本当につらかった。

伊丹 → 宮崎 → 中部 → 那覇、その後、便乗で中部まで移動。
このパターン、昨年は最後も便乗ではなく、乗務だった。
ちょっとだけ、勤務が楽になった感じだ。

クルー・ブリーフィングのとき、CA さんの勤務が書いてあるメモを見た。
あっ!
最後まで一緒で、しかも、最後の便、那覇 → 中部 も乗務なんだ。
お疲れ様です・・・・・・。
いいんですよ。 ゆっくりくつろいで下さい。 おもてなし致します。」(CA)
う〜〜〜〜ん、言ってることは優しいが、ちょっとトゲのある雰囲気か?
イヤ、気のせいか。
肩身の狭い一日が、また始まった。



2006.01.07

今朝、05:00に起きるために、昨晩は19:30にベッドに入った。
9時間寝ようと思って逆算すると、消灯が早くなってしまう。
ところが、何故か01:30にパッチリ目が覚めてしまった。
作戦大失敗。
テレビを見たり、雑誌を読んだりしながら眠気を誘ったが、不発。
03:30に寝るのをあきらめ、アメリカのテレビ・ドラマを見て過ごした。

今日、一日一緒に乗務する客室乗務員(CA)に、
昨晩19:30に寝て、今朝01:30に起きたことを話した。
すると、驚いたことに一人が言った。
私、昨日は20:30に寝て、今朝、02:30に起きました。」(CA)
「それって、僕と1時間ずれてるだけですね。 眠くないですか?」
私、次の日、仕事が早いとき、緊張してしまって一睡もできないこと、多いんです。」(CA)
ひょぇぇええ〜〜〜〜〜!?!?
そりゃあ、大変だ。
早く寝れるようになるといいですね♪

今日の勤務は、中部 → 新潟 → 千歳 → 新潟 → 那覇。

昨晩のニュースによると、今日は日本海側で大雪が降るはず。
ディスパッチで天気をチェック。
予報を見るかぎり、千歳はそれほど悪くなさそうだ。
問題なのは新潟か・・・・。
あれっ?
新潟空港の現況の天気、思ったほど悪くないぞ。
予報はどうだろう・・・・・・。
ふーーん、視程はそれほど悪くないんだ・・・・。
で、風が強まりながら、東から北西に振るのか。
ってことは、横風制限がオーバーするかもしれないのね。
横風の強さは平均で20kt か・・・・。
それなら、滑走路の滑りやすさMG(Medium to Good)までなら着陸できるか。
Poor が出たらアウトってことね。
レーダー・エコーの動きをコンピューター画面でチェック。
雲の流れは北から南か・・・・・。
赤外線画像を見ると、日本海側の雲が小さくなりながら東に進んでいる。
この感じからすると、きっと、新潟の天気が今より急激に悪化することはないだろう。
今の風は東風だが、ILS 28 で追い風で着陸できそうだ。
視程も問題ない。

311便は新潟着が08:15。
08:00までに新潟空港の除雪を終わらせ、
その後、滑走路のブレーキング・アクションを調べるらしい。
ちょっぴり新潟の天気が気になったので、
新潟のディスパッチャーに電話して状況を聞いてもらうよう、中部のディスパッチャーにお願いした。
新潟での雪の降り方は激しくなく、08:00に除雪終了後、
ブレーキング・アクションはほぼ間違いなくMG(Medium to Good)以上を出せそう、とのこと。
そっか・・・・・、現地の人が言うんだから、問題なく着陸できるだろう。

中部空港を離陸し、右手に富士山を眺めながら上昇し、
そして巡航高度 25,000feet で水平飛行に移った。
中部から新潟は飛行機で飛ぶとあっという間。
カンパニー無線の周波数を、中部から関東、そして新潟へと切り替えた。

時計を見ると07:50。
そろそろ除雪作業、終わったかも。
新潟に状況を聞いてみよう。

先ほどから雪が激しくなってきてまして、視程が落ちてます。
 レーダー・エコーを見る限り、この状況、しばらく続きそうです。
」(新潟ディスパッチャー)

ありゃりゃ、ヤバイじゃん。 早く降りなきゃ。
しばらくして、再びカンパニーが呼んできた。

ブレーキング・アクションでました。 Very Poor(VP)です。」(新潟ディスパッチャー)

ひょぇぇぇぇええ〜〜〜〜〜〜〜。
どーすんのよ。
着陸できないじゃん?!?!
ってことはだ、今から除雪やり直すってことでしょ。
除雪って、50〜60分はかかるんじゃないの??
減速、減速。
早く新潟上空に着いてもしょうがない。
スピード絞ってちょっとでも燃料節約しなきゃ。
新潟上空でホールディング決定だな、こりゃ。
そんなことを考えていると、再びカンパニーで呼んできた。

Very Poor が出てしまったので、今からもう一回除雪に入ります。
 恐らく、早くて40分、遅くて1時間はみといてください。
 新潟上空でホールディングお願いします。
」(新潟ディスパッチャー)

そしたら、一発アナウンス入れとくか・・・・。
CA さんに連絡してからアナウンスを入れよう。
インターフォンで CA さんを呼んだ。
「すみません。 Bad News です。」
え゛っ! なんですか?」(CA)
「新潟、Very Poor 出てしまったので、除雪やり直しです。
 上空で1時間ぐらいホールディングしそうな雰囲気です。」

新潟空港で予想外の降雪が始まり、
滑走路の滑りやすさが着陸可能な規定値を超えてしまっているので、
もう一度除雪作業をやり直すため、上空で50分ほど待つ、という内容のアナウンスを入れた。

さてと・・・・。
オルタネートは羽田。
(オルタネート=着陸できなかったときに、行き先を変更して向かう空港)
新潟から羽田までの燃料を残すと、
新潟上空で待機可能な時間は1時間40分か。
じゃあ、50分待ってから一回アプローチして、
もし、着陸できずにミスト・アプローチして新潟上空まで上昇したら、
もう一回アプローチするぐらいの燃料はあるだろう。
羽田の天気は良好だから、ギリギリまで待てそうだ。
でも、この後(311便の後)、千歳行って、新潟戻って、那覇まで行くとなると、
それぞれ到着から出発までの便間が30分しかないから、便は大きく乱れるな・・・。
しかも羽田にダイバートしたら、 Ship ぐりも困るだろうな。
最悪、新潟空港がずっとダメなら、
お客さんは東京から新潟まで地上交通手段で移動してもらって、
うちらはフェリーで千歳に飛行機持って行くのかな?(フェリー=飛行機を空で飛ばすこと)

数分後、カンパニーで呼ばれた。
降雪が激しく、今、除雪に入ってもブレーキング・アクションが
 再び Very Poor になってしまう可能性もあるので、雪が止むまで除雪しないことになりました。
 降雪は、この先1時間半ほど続きそうです。
」(新潟ディスパッチャー)
「1時間半後に除雪作業に入ったとして、そこからさらに1時間かかるんですよね?
 それでは燃料足りないのでダイバート決定ですか?」
はい、その方向で検討してます。」(新潟ディスパッチャー)

あっちゃー。
ワースト・インフォもつけてないのに、ダイバートするのか。
(ワースト・インフォ=「目的地天候不良のため着陸できない場合は、○○空港へ向かいます」
             というアナウンスを出発前に流し、
             お客さん達にその旨周知し、了解してもらって就航すること)
マズイでしょ、それ。
でも、仕方ない。
丁重に、丁重にお詫びのアナウンスを入れるか。
それにしても、数分前に上空で1時間待機する、ってアナウンス入れたばかりで、
今度は、すぐにダイバートする、ってアナウンス入れるの、イヤだなぁ。
とりあえずインターフォンで、CA さんにお客さんの雰囲気を聞いてみようか。

「もしもし、さらに Bad News です。」
え゛ぇ゛っ! なんですか?」(CA)
「ダイバート決定です。」
ほんとですか? ワースト・インフォついてませんけど。」(CA)
「そうですよね。 しかも、羽田にダイバートですからね。」
え゛え゛ーーーっ!? 羽田ですか? 中部にリターンじゃないんですか?」(CA)
「そうですよね。 普通、中部に戻りますよね。でも、飛行計画では羽田ですし。」
それは、みなさん、困ると思います。」(CA)
「そうですよね。 確かに中部に戻って欲しい、と思う人も多いでしょう。
 ちょっと調整してみます。」

新潟のディスパッチャーをカンパニーで呼び出そうとすると、向こうから呼んできた。
オルタネート、飛行計画上は羽田ですけど、今、雪で上越新幹線が止まってますので、
 羽田に行かれてもお客さんが困るので、中部にリターンするよう、東京と調整してますので、
 もう少しお待ちください。
」(新潟ディスパッチャー)

さすがじゃん。
よく分かってるじゃん。
上越新幹線が止まってるってことまでは、我々には分からないもんな。
羽田にダイバートしないですむのか。
助かった。
よし、じゃあ、中部リターンの方向で調整してるって、アナウンス入れるか。

インターフォンで CA さんに連絡してから、お詫びのアナウンスを入れた。

新潟上空で10分ほど待機しながらダイバート先の調整が終わるのを待ち、
カンパニーでOKの連絡が入ってから管制官にリクエストして中部空港に引き返した。
エアバスに乗って何年にもなるが、ダイバートしたのはコパイ時代に一回だけ。
機長になってからのダイバートはこれが初めて。
しかも、アプローチもせずにそのまま引き返すなんて・・・・。

311便では、上空で3回、中部空港到着後、スポットイン後に1回、合計4回アナウンスを入れた。
大変申し訳ない、ごめんなさい、という気持ち、果たして伝わっただろうか。

ここから先は、私達に出来ることは何もない。
待つだけだ。
新潟 → 千歳(765便)と 千歳 → 新潟(766便)がキャンセルになったことを知った。

中部 → 新潟(311便)は旅客数14名だったので、新潟の天候が回復し次第、
後の便で送り届ければ良い。
恐らくその便を私達が担当するのだろう。
新潟 → 那覇(465便)は旅客数150名以上だから、
新潟としてはなんとしても飛行機に来て欲しいはず。
465便の出発時刻は12:15。
12時〜13時までに新潟空港に到着できるなら、465便はなんとか私達が飛ぶはずだ。
そこから逆算すると、中部出発時刻は11時〜12時。
飛行計画を作ってから飛び立つまで、30分はかかるから、
10:30〜11:30までに新潟の雪が弱まる必要がある。
で、飛行機が中部空港を離陸するころ、新潟空港で除雪を開始し、
飛行機が新潟上空に到着するまでに除雪を終え、ブレーキング・アクションを出せばいい。

新潟空港の天候をチェック。
ギョェェェエエエーーーーーッ!?!?!
RVR300mから400mが、ずっと続いてるんじゃん?!?!
これはおよびじゃないわ。
RVR800mはなければ進入を開始することすら規程上できない。
雪が降り止んだとしても、除雪は大変だぞ。
ブレーキング・アクション、MGが出せず、M(Medium)が出てしまって、
横風が強まったら結局着陸できないもんな。
レーダー・エコーを見る限り、雪は続きそうだ。
これは新潟、行けないかもな・・・・。
新潟に行けなかったら・・・・・、中部から那覇にフェリーか?
そんなもったいないこと、したくないなぁ。

乗員も CA さんも、みんなスタンバイ・ルームにいた。
「CA さん達って、今日は那覇ステイですよね?」
違うんです。 那覇に着いてから福岡に便乗で戻るんです。」(CA)
「え゛え゛え゛ーーーーっ!?!?!?! そんな大変な勤務だったんですか?」
那覇発福岡行きの飛行機、A社のだと間に合わないので、J社のに乗ることになりそうです。」(CA)
中部 → 新潟 → 千歳 → 新潟 → 那覇 を飛んでから 那覇 → 福岡 を便乗??
06:25に働きだして、仕事が終わるの何時? 18:00過ぎるんじゃないの?
かわいそすぎる・・・・。

私宛ての電話がディスパッチに何度か入った。
不思議な気分だ。
私宛に電話がかかるなんて、私が機長なのだから当たり前と言えば当たり前だが、
初めての経験だから恥ずかしいし、違和感がある。
電話によれば、
11時まで待って、新潟の降雪状況がそれまでに良くなれば新潟へ行き、465便を就航させる。
もし、11時までに新潟の状況が良くならなければ、フェリーで那覇へ飛行機を持っていく。
その方向で検討している、とのことだった。

CA さんは CA さんで、自分達のスケジュールを管理する部署と携帯電話で連絡を取りながら、
今後の仕事がどうなるのか確認していた。

そうこうしているうちに11時になった。
11:10頃、また電話があった。
新潟 → 那覇(465便)の欠航が決定。
中部 → 那覇 をフェリー、つまりお客さんを乗せずに空で飛ばすことになった。
CA さんは、12:10の便で中部から福岡へ帰ることが決定。
新潟や千歳で私達が来るのを待っているお客さん達には、大変申し訳ない結果になってしまった。

中部空港を離陸し、那覇へ向かった。
途中、何度か新潟の天気を ACARS で取った。
あれから、ずっと降雪が続き、RVR200mという値まで時々出ていたようだった。
そして、ようやく14:00に新潟空港の除雪作業が始まったようだった。
14:35には新潟のブレーキング・アクション Very Poor。
まだまだ離着陸ができる状態ではない。

那覇に着陸して、ディスパッチで新潟の状況を聞いた。
先ほど、新潟行きがオルタネート羽田で出発しました。
 出発前は新潟 Very Poor でしたけど、今、ようやく Good が出ました。
 でも、除雪が終わったのは滑走路のみで、エプロンには入れる状況じゃないようで、
 これから除雪するそうです。
」(那覇ディスパッチャー)
(エプロン=お客さんを降ろすために飛行機が駐機するところ)

新潟空港は、今、どんな風景なんだろう?
RVR200m〜400mで何時間も雪が降り続いたら、もの凄いことになってるんだろうな。
見てみたいような、見てみたくないような。

そういえば、昨日の私達の勤務は、那覇で終わってから、便乗で 那覇 → 中部 に移動。
今日は311便は上空で引き返したわけだし、中部 → 那覇 を飛行機をカラで飛ばすわけだから、
昨日、那覇で仕事を終えて、そのまま那覇ステイで良かったわけじゃん?
無意味に燃料を使ってしまって、もったいないことをした。
なんか、今日、全然仕事をした気がしないんですけど・・・。



2006.01.13

昨日、羽田空港で Runway 34R へ向かう途中のこと。
ナヌッ?!
ウ○コ色のA320?!
なんだ、あれハッ!?!?
胴体の上3分の2が茶色、下3分の1が白。
垂直尾翼には筆記体で「SF」の文字が。
あ゛っ!!
スターフライヤーだっ!!
スターフライヤーって、機体が黒くて格好よい、という評判なのに・・・・。
まだ運航は開始してないはずだから、きっと訓練だろう。

再び羽田へ戻り、その後、関空へ向けて出発するために、再び Runway 34R へ向かった。
ナヌッ?!
垂直尾翼が白いぞ??
さっきは、垂直尾翼も含めて胴体の上3分の2が茶色だったけど、
今度は垂直尾翼を除く上3分の2が茶色で、垂直尾翼は白い。
ヘェ〜〜。
スターフライヤーって、2種類の機体があるんだ。
羽田に2機もA320いるのか。

今日は大分空港へ行った。
コパイ・デューティーで私は右席に座っていた。
Runway 19 へ VOR Approach で着陸後、Push Back しているスターフライヤーの機体が見えた。
「あれぇ? 大分にも来てるんですね。」
きっと訓練してるんでしょ。」(左席のキャプテン)
「そうそう、スターフライヤーって2種類の塗装があるんですね。
 垂直尾翼が茶色いのと白いのと。」
あぁ、あれ、左右の塗装が違うだけだよ。」(左席のキャプテン)
え゛え゛ぇ゛っ!?!?

Push Back を終えたスターフライヤーが地上滑走していった。
機体の右側面が見えていたが、旋回するにつれ、ジワァーっと左側面が見えた。
ほんとだっ!
反対側の尾翼は色が違うんだ。

だまされたぁ〜。



2006.01.17

昨日は定期訓練、今日はロフト訓練だった。
それぞれ1年に1回ずつある訓練。
何故か心理的に負担が大きかった。
その名の通り、審査ではなく訓練なので、
コパイ時代はストレスを感じることもなく普通にこなしていた。
今回は違った。




2006.01.20

昨晩のニュースでは、今日は大阪でも雪が降る、と言っていた。
大阪で雪が降った前回、中部空港が大雪で便が乱れていた。
今日の勤務は、
伊丹 → 宮崎 → 中部 → 那覇、その後、便乗で中部に移動。
中部には2回行くので、中部空港が乱れると困ってしまう。
少し不安だった。

今朝、起きて外を見ると雪は降っていなかった。
ホッとした。

会社に到着後、ディスパッチで天気をチェック。
大阪は夜から雪の予報。
今日一日は問題なさそうだ・・・・。
でも、明日はヤバイかも。
あれ?
前回も同じパターンで新潟に着陸できずに引き返さなかったっけか?
そうそう、あれは中部空港で朝バイキングを食べまくり、その後、
中部 → 新潟 → 千歳 → 新潟 → 那覇 のパターンだった。
最初の便でリターンしたんだ。
そう、明日はあの時と同じパターンを飛ぶ。
マズイ、マズイぞ。
何か起こるかもしれない。

西日本は気流が乱れており、
20,000feet 真中あたりから 30,000feet 前半まで時々強く揺れているようだった。
私達が向かった空港の天気はそれほど悪くなく、
上昇、巡航、降下のシートベルトサイン消灯、点灯のタイミングに配慮する以外、
とくに問題のない一日だった。

明日の天気はどうかな?
雪で Big Delay がなければ良いのだが・・・・。



2006.01.21

意外や意外。
私が行く空港の天気は全然悪くなかった。

朝一で中部のディスパッチに行くと、なんとなくザワザワしていた。
ディスパッチャーに聞いてみた。
「どうしたのですか?」
今日は東京が雪で乱れそうで・・・。」(ディスパッチャー)

空港の予報を見ると、確かに雪が降ることを予想している。
地上天気図を見ると・・・、
おっ!
低気圧が太平洋側にあり、東北東に進んでいる。
低気圧の北側に東京があるこの形、東京に大雪をもたらす典型的な天気図だ。

新潟へ行った。
天気は良好。
学生時代、新潟に住んでいたコパイが言った。
新潟で冬にこんなに天気がいいのって、月に1、2回ぐらいですよ。」(コパイ)

千歳も天気が良かったし、う〜ん、今日はいい一日だなぁ。
「なぁなぁ、こーんな天気がいいのって、やっぱ、誰かの行いのおかげかなぁ?」
そうっすよ。 僕の行いがいいからっすよ。」(コパイ)
へっ??

航空情報によると、午後1時頃、ロケット発射がある予定だった。
私達が新潟を出発し、那覇へ向かう途中、ちょうど九州に近づくころだ。
運が良ければロケットが飛んでいくところを見れるかもしれないっ!
と思いきや、上空を飛んでいる飛行機へ交信するカンパニー無線が聞こえてきた。
ロケットランチ(Rocket Launch)ですが、本日、キャンセルになりました。」(カンパニー)
あっ、そう。
残念。

その少し前、広島の上空を通過中の出来事。
太陽を中心に、丸い虹を発見!
そういえば、先日も種子島の近くで丸い虹を見た。
そのとき一緒だったコパイが、丸い虹が見える原理に詳しく、解説があった。
飛行機をはさんで、太陽と反対方向に丸い虹は見えるのだとか。
その現象には特別の名前がつけられているらしい。
もちろん、そのとき聞いた名前、覚えていない。

あれぇ〜?
今日は太陽を中心に、太陽の周囲に丸い虹が見えるぞ。
しかも、2重だっ!
きれいだなぁ〜♪
よおーく見ると、虹の上にキラキラ光るものが流れている。
なんだ、あれ?
あぁ、そっか、雲を構成する細かい氷の粒達だ。
氷が流れているのではなく、飛行機が動いているので、そう見えるのだが、
それがなんとも美しい。

そこは 30,000feet。
雲の頂上近辺だが、やや下。
薄い雲の中で、太陽と青空が透けて見える感じだった。
南西に向かって飛行するに従い、雲の頂上の高さが下がり、飛行機が雲の上に完全に出たころ、
気がつくと太陽の周りにあった丸い虹も消えていた。



2006.01.22

那覇発中部行き 306便。
中部空港の予報では、
コパイ操縦の横風制限を一時的に上回ることを予想していたが、
予報ははずれることも多いので、コパイに操縦してもらっていた。
中部空港へ向けてアプローチを開始。
風は320度から7kt。
全然問題ない。

高度を下げ、5000feet を通過するころの上空の風は280度から 50kt ほどだった。
妙に西風が強いし、やけに揺れる。
本当に地上の風は320度から7kt程度なのか?
ちょっと違和感はあったが、まぁ、そういうこともある。

3500feet で水平飛行に移り、ILS 36 の進入許可を中部アプローチにもらった。
中部タワーにコンタクト。
へっ?
280度から 22kt??
いつ風、変わったのさ?!
イヤ、聞き間違いか?
「ねぇ、今、280度から 22kt って言ったかな?」
はい。 この風だと右席操縦の横風制限値超えてます。」(コパイ)
そうだなぁ。
操縦、代わるか?
でも、待って。
着陸許可のとき、もう一回風を言ってくるから、
そのとき超えてたら代わるね。

All Nippon 306. Runway 36, cleared to land. Wind 280 degrees 22 knots.」(管制官)

ありゃ、ダメだな。
よっしゃ、仕方ない。
「I have control.」
操縦を代わった。
滑走路末端を通過しても、飛行機の機首はかなり左を向いている。
つい、さっきまで、320度から 7kt だったわけでしょ?
空港予報、当たるなぁ〜。
エルロンを左にとりウィング・ローにして、ちょっと機首を右に戻し、
Crab + Wing Low で接地した。

「結構、横風強かったね♪」
接地するときまで280度から25kt吹いてました。」(コパイ)

中部発宮崎行き 345便。
離陸するために Runway 36 へ向かった。
滑走路末端なある Wind Sock(吹流し)を見ると、
真横に突っ立っているではないか?!
猛烈に風が吹いているのだ。
あの感じは 25kt どころではない気がする。
すると、管制官が言ってきた。

現在280度から31〜35kt吹いていますが、どうされますか?」(管制官)

ギョェェェエエエ〜〜〜〜〜ッ?!?!
ダメじゃん!!
離陸できないじゃんかよっ!!
どーすんのっ!

「とりあえず横風制限超えてて離陸できないから、
 Runway 36 end、A1 で待機するって言ってくれる?」
しばらく地上滑走しながら考えた。
いや、待てよ・・・・。
A320は 29kt までだけど、
30kt ちょっとなら離陸できる飛行機いるかもしれない。
A1 で待機すると他の飛行機の邪魔になるかもしれない。

「ゴメン。 A2 で待機するって言ってくれる?」
(A1、A2=誘導路の名前)

さーて、どうしたものか・・・・。
予報では、「TEMPO」 って書いてあったし、そんなに長いこと強風が続くとは思えない。
カンパニーで風の傾向聞いてみるか。
機長になって1年以上経つが、横風制限を超えてしまって離陸できないのって、
これが初めて。
不謹慎だが、ちょっとワクワクする。

「もう一回、管制官に風、聞いてみてくれる?」
「All Nippon 345, request surface wind.」(コパイ)
Wind 280 degrees 29knots.」(管制官)
「おっしゃ!Just within limit ね。 離陸許可もらって。」
 Runway 36 に入り、滑走路に正対して、そして離陸滑走路を始めた。

V1、VR、V2。
機首を上げると垂直尾翼が右に流れた。
横風に負けないように、ゆっくり Rudder を戻しつつ、左に Aileron を取った。
う〜ん、いい感じだ。
ヤッター、ヤッター、初めて横風制限ギリギリで離陸したゼイ!!

離陸してしばらくすると、カンパニー無線の声が聞こえてきた。

現在、風が280度から31kt、ガスト35kt入ってます。」(カンパニー)
その風では着陸できません。
 もし、続くようならダイバートしようと思います。
」(上空を飛ぶ飛行機)

チラッとコパイの顔を見た。
ヤツもニターッと笑っていたが、私もきっとニターッと笑っていたことだろう。
うちらはほとんど待たずに離陸できてラッキーだったなぁ♪
あれ?
考えようによっちゃぁ、一番風の強い時に離陸したわけで、
アンラッキーだったのか?
ま、横風29ktを経験できて、良かった、良かった。

それから数分後、風が弱まり、290度 27kt 程度になったようだった。
きっとその飛行機は中部に着陸したことだろう。



2006.01.30

コックピットに座り、出発準備を全て終え、
お客さんが全員搭乗し終えるのを待っていた。
飛行機の入り口へと続く細いブリッジPBBには人がいない。
(PBB=パッセンジャー・ボーディリング・ブリッジ)
誰を待っているのか?
出発時刻を過ぎてしばらくすると、3人組みがPBBを通ってくるのが見えた。
きっと、彼らを待っていたのだろう。
んっ??
一人が後方に倒れるような格好で歩き、
両脇を連れの二人にかかえられて無理やり歩かされている。

「あれぇ? 酔っ払いですかねぇ?」
そうですね、きっと。
 イヤ、もしかすると、飛行機に乗るのがイヤなんじゃないですか?
」(コパイ)
「そっか。 確かにそういう可能性もありますね。
 でも、あれ程、のけぞる程、嫌がっている人を強引に連行するように連れ込みます?」

しばらくして、旅客全員が搭乗したことを CA さんがインターフォンで連絡してきた。
そのとき、私が聞く前に彼女が言った。
お客様の中に、飛行機に乗るのを嫌がっている人がいます。」(CA)
「最後に乗ってきた三人組ですよね?」
はい、そうです。」(CA)

やっぱりそうだったんだ。
それにしても、あの全身ののけぞり具合、よっぽど飛行機が嫌いなんだろうなぁ。
可哀想に。
両脇を抱えていたのはご両親なのか・・・・。
よし、いつもとちょっと違うアナウンスを入れて、少しでも安心してもらおう。

上昇中、巡航中、降下前にアナウンスを3回も入れてしまった。
でも、リハーサルなしで余計なことを思いつくままにしゃべってしまって、
噛みまくっちゃったなぁ〜。

飛行機を降りるとき、CAさんに聞いた。
「先ほどのお客さん、どうでしたか?」
はい、終始、下を向いていて、一度も顔を上げることはありませんでした。
 でも、飲み物を差し上げたら飲んでらっしゃいました。 アナウンスありがとうございました。
」(CA)

少しは役に立てたかな?